研究課題/領域番号 |
23KJ1568
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
近藤 優子 神戸大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
|
キーワード | 地震学 / 地震波トモグラフィ |
研究実績の概要 |
当該年度には、海域地震観測データを用いて地震波速度構造推定を実施するための研究を行った。海底および陸上地震計を用いた南米アンデス沈み込み帯における遠地地震トモグラフィを実施し、速度構造を推定した。推定された構造から、現在沈み込むナスカスラブに先行して沈み込み断裂したセグメント断片が存在する可能性を見出すとともに、海嶺沈み込みに伴って生じた低速度異常の分布を明らかにした。こちらの成果は国際誌に投稿し、現在査読を受けている段階である。この過程において、研究計画のターゲットとなる上部マントル浅部における地震S波速度構造の推定において、現行の遠地地震波のみを用いた手法では解像度に限界があることが確認された。そこで、当初予定していた波線追跡法の改良に加えて、近地地震・表面波を活用しP波およびS波速度構造を同時に推定できるよう地震波トモグラフィ手法の拡張に取り組むこととした。 これと並行して、Simon et al. (2021)に基づいた手法で南太平洋域に展開された自立型ハイドロフォンフロートであるMERMAIDアレイの音波波形を解析し、地震イベントの同定及び走時測定を行った。また、太平洋およびその縁辺地域に展開された海底地震計で記録された地震波形の解析に取り組み、地震記録の収集及び補正、解析が概ね完了している。このようにして、インバージョンの入力となるデータと、トモグラフィーをどのように実施していくかを考えるための知見を得ることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度は波形データに収集および海底地震計波形データの解析を進めデータ量を増やすことができた。一方で、手法上の課題により修正の必要が生じ、当初計画よりはやや遅れた結果となった。
|
今後の研究の推進方策 |
今後はまず、陸上・海底観測点の波形データを用いた解析を継続しつつ、近地地震・表面波を活用するための手法開発を進める。また、インバージョンに用いるパラメータについて今回のデータセットにおいて最適な検討する。これら入力データの準備・手法の拡張は今年度前半を目途とする。そのうえで、表面波データを追加して解析結果を改良する方法について考察を行う。 後半を目途として、速度構造モデルの信頼性の検証および構造の解釈に移行し、データにもとづいて検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2024年度に計画されていた海洋物理探査が船舶のスケジュール調整のため延期となり、使用額が減少した。また、論文投稿までに時間を要したため、当初の計画と実際の使用額に差が生じた。今年度は、現在使用中の計算機の経年使用による損耗を想定して、主要経費は計算機やデータ保管用のハードディスクの購入に使用する。また、論文英文校閲および投稿費用、新しい手法についての議論と情報収集のための学会参加等に使用する。
|