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2023 年度 実施状況報告書

皮質と視床下部を結ぶセントラルコマンド伝達神経の解明:ラットTRAP法の活用

研究課題

研究課題/領域番号 23KJ1595
研究機関鳥取大学

研究代表者

奈良井 絵美  鳥取大学, 医学部・医学系研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2023-04-25 – 2025-03-31
キーワードセントラルコマンド / 運動 / 交感神経活動 / 視床下部 / 内側前頭前野
研究実績の概要

研究者らはこれまでに、視床下部脳弓周囲領域 (PeFA)のオレキシン産生神経がセントラルコマンドを伝達する脳神経回路の一端を担うことを明らかにしている(Narai et al., J Physiol, 2024)。また、セレンディピティ的にPeFAの非オレキシン産生神経のみを選択的に刺激する実験系の確立にも成功し、PeFA非オレキシン神経の機能解析を行った(Narai et al., 投稿中)。その結果、オレキシン産生神経刺激時の歩行・交感神経活性能と非オレキシン産生神経刺激時のそれらとでは特性が異なるものの、いずれもセントラルコマンド機能をもつことが明らかになった。本研究では現在、運動時にオレキシン産生神経を含むPeFA神経の上流でそれらを制御する皮質脳領域を明らかにし、皮質と皮質下を結ぶセントラルコマンド伝達神経を解明することを目的として実験を行っている。
2023年度は、セントラルコマンド伝達回路の一端を担うPeFA神経に入力する皮質脳領域Xの特定を試みた。GFP発現を誘導する逆行性アデノ随伴ウイルスベクターをラットPeFAに注入した。過去の報告から、逆行性に標識される領域には、島皮質等も想定していたが、実際には大脳皮質内側前頭前野(mPFC)の下辺縁皮質 (infralimbic cortex)、前辺縁皮質(prelimbic cortex)、帯状回(cingulate cortex)においてGFP陽性神経が多く検出された。よって、PeFAにはmPFC神経が単シナプス投射することが明らかになった。mPFCは実行機能や認知行動、情動、逃走応答等にも関係する領域であることが知られており、この領域が運動の発現やその際の循環応答生成に寄与している可能性がある。次年度の実験によりこのX→PeFA経路が運動時に興奮することが明らかになれば、その経路を今後の調査対象とする。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2023年度に計画していた調査領域Xの特定に目途を立てることができた。その領域からオレキシン神経が局在する脳弓周囲領域へ至る単シナプス経路に光受容陽イオンチャネルを発現させることができることを確認し、光遺伝学的な神経活動操作のための予備データとなった。調査予定の経路にFos-CreERT2ラットを用いてFosTRAP法を適用する準備も進めている。

今後の研究の推進方策

まず、視床下部脳弓周囲領域 (PeFA) に投射する内側前頭前野の神経の、走行運動による活性化を、神経活性マーカーであるFosの発現から解析し、調査領域Xを決定する。そしてその調査領域Xから視床下部脳弓周囲領域に至る経路の機能調査へと発展させる。機能解析には、運動によって興奮する神経のみの活動を検出・操作するラットFos-TRAP法を適用する。このラットFos-TRAP法とファイバーフォトメトリや光遺伝学を組み合わせて、運動時に興奮した神経を選択的に活動計測および神経活動操作する。同時に圧検出テレメトリ送信機を使用した循環パラメータ実測を自由行動下で行う。具体的には、「1)走行運動中の運動興奮性X→PeFA神経の活動とセントラルコマンド反応(走行運動および循環反応)とは相関する」「2) 運動興奮性X→LH神経の刺激はセントラルコマンド反応を生成する」「3) 歩行運動中の運動興奮性X→PeFA神経の活動抑制はセントラルコマンド機能を低下させる」の仮説を証明する。これらの証明により、脳弓周囲領域に投射する運動興奮性X神経が運動時の身体運動と循環調節に不可欠であることを示す。

次年度使用額が生じた理由

2023年度にはラットFos-TRAP法を用いた実験を行わなかったため、想定していたタモキシフェン購入費用分が不要であった。また、受入研究室変更に伴う異動等の事情により、予定していた日本生理学会に参加することができなかったことも、次年度使用額が生じた理由である。
2024年度にはFos-TRAP法に必要なタモキシフェンの購入、ファイバーフォトメトリや光遺伝学実験に必要な消耗品の購入およびラット飼育料が必要になる見込みであり、2023年度分を繰り越して使用する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2024

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)

  • [雑誌論文] Orexinergic neurons contribute to autonomic cardiovascular regulation for locomotor exercise2024

    • 著者名/発表者名
      Narai Emi、Yoshimura Yuki、Honaga Takaho、Mizoguchi Hiroyuki、Yamanaka Akihiro、Hiyama Takeshi Y.、Watanabe Tatsuo、Koba Satoshi
    • 雑誌名

      The Journal of Physiology

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1113/JP285791

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Hypothalamic Orexinergic Neurons Projecting to the Mesencephalic Locomotor Region Are Activated by Voluntary Wheel Running Exercise in Rats2024

    • 著者名/発表者名
      Narai Emi、Watanabe Tatsuo、Koba Satoshi
    • 雑誌名

      Yonago Acta Medica

      巻: 67 ページ: 52~60

    • DOI

      10.33160/yam.2024.02.006

    • 査読あり / オープンアクセス

URL: 

公開日: 2024-12-25  

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