研究課題/領域番号 |
23KJ1636
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
大矢 元海 広島大学, 先進理工系科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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キーワード | 高エネルギー原子核衝突 / ミュー粒子測定 / 粒子生成機構 / 量子色力学 |
研究実績の概要 |
LHC-ALICE実験第三期稼働においてデータを収集し、前方領域での粒子測定の品質評価及びミュー粒子対不変質量分布解析によるミュー粒子の起源解析を推進した。2022年に引き続き、2023年4月から10月にかけて、ALICE実験において重心系衝突エネルギー13.6TeVの新たな陽子陽子衝突データを取得した。前方領域のミュー粒子検出器群は、2022年から導入した新検出器を含めて順調に稼働した。測定したミュー粒子の品質評価を行い、改善が必要な点を発見し解決に取り組んだ。改善点は主に、ハドロン吸収体前方と後方に位置する検出器それぞれで再構成した飛跡の間違った組み合わせの多さや、衝突事象と飛跡の関連付けの精度が低さにある。飛跡組み合わせの精度を向上するために、機械学習を用いた飛跡組み合わせの導入に取り組んだ。より性能の高い機械学習モデルを構築するために、実データから教師データを得ることが可能であることを見出した。まだ実装には至っておらず、今後の課題である。それと並行し、ミュー粒子対不変質量分布の背景事象の評価を行った。不変質量分布中の無相関な背景事象を二種類の方法を使って評価し、その差し引きを行った。その結果、ベクターメソン由来のピークから、過去のALICE実験の測定に比べて精度が向上していることが確認できた。また、重クォークに由来する背景事象を除去するために、シミュレーションを用いてその分布を見積もり、その特徴によって信号と区別し差し引く方法を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
必要なデータを継続的に取得し、得たデータの品質評価と背景事象評価を行っている段階である。データは順調に収集することができており、本研究で目指す物理結果を得るために十分な統計量を得ることが出きた。データの品質を評価した際に予期しなかった課題も判明したが、ALICE実験ミュー粒子解析グループの研究者達との協力によって、解決の見込みが立っている。物理信号を取り出すための背景事象評価に着手し、無相関な背景事象を差し引いたことで従来の研究よりも高い精度でのミュー粒子対測定が出来ていることが分かった。それにより、より精度よく背景事象を差し引き、物理信号を取り出すための準備が整ったと言える。現在は、重クォーク背景事象の背景事象評価を開始している。
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今後の研究の推進方策 |
ミュー粒子対の測定精度を向上に取り組むことが引き続き必要となる。機械学習を実装し、より高い精度・効率でミュー粒子を測定することを目指す。それと並行して、ミュー粒子対の不変質量分布から背景事象の精密な差し引きを行う。無相関な背景事象と相関を持つ背景事象があり、それぞれの収量をシミュレーションを活用して評価し、差し引く。また検出効率の計算して不変質量分布を補正し、それらを構成する物理信号を解析する。これらの研究は、主に海外の研究機関に在籍するALICE実験の共同研究者と協力して行う。共同研究者との協力のため、短期の海外出張を計画している。最終的に結果をまとめ、論文の出版を行う。
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