研究課題/領域番号 |
23KJ1637
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
南平 眞実 広島大学, 統合生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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キーワード | 塩・アルカリ耐性機構 / カリウム獲得機構 / OsHAK17 / イネ |
研究実績の概要 |
これまでの研究から,塩・アルカリ耐性イネ品種Shwe Nang Gyi(SNG)は塩・アルカリ感受性イネ品種コシヒカリ(KSH)よりもカリウム含有量が高いことや,SNGを対象とした網羅的発現解析によりカリウム輸送体遺伝子群(HAK/KUP/KT family)が塩・アルカリストレス下で発現増加することが分かっていた.加えて,OsHAK17はKSHよりもSNGで発現量が高かったことから,OsHAK17の塩・アルカリ耐性機構への寄与が示唆されていた.そこで本年度は,塩・アルカリストレス下におけるOsHAK17の機能を酵母相補性試験により明らかにし,OsHAK17の塩・アルカリストレス耐性への寄与を評価した.SNGから単離したOsHAK17をpDR195プラスミドのPMA1プロモーター下流に導入し,これをNa感受性酵母AB11c株に組み込むことで,酵母形質転換体を作製した.酵母相補性試験の結果,塩処理区(100-200 mM Na)と塩・アルカリ処理区(100, 150 mM Na + pH 7.0-8.0)の両方で,OsHAK17発現株は対照株よりも生育が良好であった.一方で,低濃度の塩処理区(50 mM Na)では両酵母株間の生育に差は見られなかった.また,酵母の元素濃度を測定したところ,塩処理区においてOsHAK17発現株で対照株よりもカリウム濃度が高いことが示された.また,組織特異的局在や細胞内内局在の解析のための形質転換体の作製も進めている.今後は,OsHAK17バリアントにおける機能差にも注目して研究を進めていく予定である. あわせて,炭酸水素イオンがイネに及ぼす影響について解析するために,陽イオンの影響が少ないが,炭酸水素イオンの影響が現れるような処理条件の検討を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
塩・アルカリ耐性イネ品種における塩・アルカリ耐性機構の一部に,OsHAK17を介したカリウム獲得機構があることが酵母レベルで明らかになったため.また,炭酸水素イオンがイネに及ぼす影響についても解析ができるように,準備を進められているため.
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今後の研究の推進方策 |
塩・アルカリストレス下におけるOsHAK17の機能解析のために,各種形質転換体を作製する. また,炭酸水素イオンがイネに及ぼす影響について解析するために,分子生理学的解析や網羅的遺伝子発現解析を実施し,生育抑制の原因や耐性関連遺伝子を探る.
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次年度使用額が生じた理由 |
炭酸水素イオンがイネに及ぼす影響を明らかにするために,RNA-seqを用いた網羅的遺伝子発現解析を行う予定であったが,条件検討のために実施した予備実験の都合上,次年度にRNA-seq解析を実施することにした.一方で,OsHAK17の機能解析は予想よりも早く結果を得ることができたため,こちらを先に進めることにした.その結果,実験計画の順序を入れ替えることとなった.
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