研究実績の概要 |
収穫前の茶葉を2週間ほど遮光すると、茶葉の旨味成分(テアニンやアミノ酸等)が増加し、えぐみの少ない高品質な茶葉になることが明らかになっている。しかし、遮光が茶葉のトライコーム数などの表現型に与える影響については解明されていなかった。シロイヌナズナではCPCと呼ばれる転写因子がトライコーム形成を制御することが明らかになっている。申請者らは、これまで茶においてシロイヌナズナのCPCホモログが茶で6つ(CsCPC-1,CsCPC-2,CsETC1-1,CsETC1-2,CsETC3,CsTRY)存在することを明らかにし、これらをCsCPCファミリーと名付けている。本研究では、茶の生産現場で慣行されている遮光作業が茶葉に与える影響について、表皮細胞およびトライコーム形成を制御するとされるCsCPCファミリーに注目して研究を行った。広島大学圃場にて栽培している茶品種”さえみどり”を3週間遮光した茶葉と、遮光していない露光条件の茶葉を各成長段階別(若葉から成熟葉)にサンプリングし実験で使用した。表現型観察から、遮光により第一葉(若葉)のトライコーム数が減少していることが明らかになった。また、茶葉の切片を作成し、断面図を観察したところ、露光条件に比べて遮光条件の茶葉の表皮細胞は薄くなっていた。6つのCsCPCファミリー遺伝子の発現をリアルタイムPCR法で解析したところ、CsCPC-2、CsETC1-2,CsETC3の3つの遺伝子発現が遮光によって増加していたことを明らかにした。以上の結果より、CsCPC-2、CsETC1-2,CsETC3遺伝子は遮光によって発現量が上昇し、第一葉のトライコーム形成を抑制することが示唆された。
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