研究課題/領域番号 |
23KJ1664
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
吉田 佳世 徳島大学, 大学院口腔科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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キーワード | 歯周病 / microRNA / 細胞外小胞 / マクロファージ / Porphyromonas gingivalis |
研究実績の概要 |
歯周病原菌を感染させたマクロファージの放出する細胞外小胞のmiRNAと,小胞を長期投与したマウスの肺mRNAをマイクロアレイ解析にかけ,歯周病原菌感染によって発現が変動するmiRNAやmRNAを同定した。さらに同定したmiRNAとmRNAでペアになるものを選択し,マイクロアレイのバイアスに対応するため,それぞれの発現をリアルタイムPCRを用いて確認した。なかでも発現変動が大きかったものや歯周病と関連すると報告のあるものを優先して解析した。 さらに,小胞中に含まれ,かつ歯周病と関連が深いとされるmiR-155のトランスフェクション添加実験を行った。細胞は肺胞上皮細胞A549細胞や臍帯血管内皮細胞HPMEC,マクロファージ様細胞として分化させたTHP-1細胞を用いた。想定通り,ペアとして抽出した遺伝子はいずれも有意な発現の減少をみせた。そこで小胞の添加実験もおこなった。しかしながら,いずれの細胞腫においてもターゲット遺伝子の発現変動はみられなかった。 次に,マイクロアレイ解析によって得られた歯周病原菌感染マクロファージの小胞で変動したmiRNAが,歯周病原菌感染による特異的なものなのかを調べるため,LPS刺激をおこなったマクロファージの小胞に含まれるmiRNAと比較をおこなった。さらに,この発現変動が歯周病原菌感染による自然免疫レセプターシグナルに依存するかを調べるため,Toll-likereceptor (TLR) シグナル阻害実験およびin silico解析をおこなった。そして,変動したmiRNAの分子特性・機能特性を調べるためにmiRNAの配列モチーフ解析とパスウェイ解析をおこなった。その結果,マクロファージ内でのmiRNAの転写はTLR2/NFkBシグナルに依存することが示唆された。また,共通する配列モチーフが同定され,これはすでに報告のあるソーティングモチーフと類似性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初に研究計画として立てた実験を予定期間内に遂行することができた。in vitro実験においては想定していた結果を得ることはできなかったが,in silico実験に手法を変更し,一年間における研究結果の一部を学会(国内)で発表することができた。また,結果の一部を学術論文として投稿できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では,得られた配列モチーフがmiRNAの選別や歯周病・全身疾患における炎症に関与しているかを検討し,歯周病の病態形成機構を明らかにしていきたいと考えている。そのために,まず昨年度で同定した配列モチーフが細胞から細胞外小胞へのソーティングモチーフであるかを検討する。このモチーフをもたないmiRNAにこのモチーフを入れることで,そこから産生されたEVsのmiRNAの発現がどう変動するかを確認する。また,さらなるRNAシーケンス解析を行い,歯周病原菌に感染した細胞内でのmiRNAプロファイルと,その細胞外小胞中のmiRNAプロファイルを比較検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)想定していた結果が得られず実験手法を変更し,ドライ解析(データベース等を用いたコンピューター解析)に時間を要した。そのため,年度後半に予定していた追加のマイクロアレイ解析を次年度に実施することになり,次年度使用額が生じた。 (使用計画)マイクロアレイと比較して,多額を要する代わりにデータの汎用性が広いRNAシーケンスの使用を検討したい。さらに,サンプル数を統計解析ができる各群3つ以上を確保するためには高額を要する。また,得られた結果をin vitro解析するために,細胞・細菌培養にかかる物品とリアルタイムPCRキットが数多く必要になると予想されるため,次年度研究費と合わせて使用する計画である。
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