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2023 年度 実施状況報告書

基底三重項有機分子を用いた量子センシング

研究課題

研究課題/領域番号 23KJ1676
研究機関九州大学

研究代表者

有川 忍  九州大学, 工学研究院, 特別研究員(PD)

研究期間 (年度) 2023-04-25 – 2026-03-31
キーワード量子センシング / 基底三重項 / 偏極 / ODMR / 発光
研究実績の概要

量子効果を利用して外部環境の物理量を計測する量子センシングは高感度な計測手法として近年注目されている。なかでも、NV センターを用いた 光検出磁気共鳴 (ODMR) 測定は、磁場や温度、電場を計測する有力な手法として研究されている。この NV センターはダイヤモンド構造を持つため高い安定性を持つが、サイズが比較的大きく内部構造が不均一なため、分子レベルでの検出や精密な物性制御が困難という問題があった。そこで本研究では、NV センターにかわる分子型センサを開発できればこれらの問題は解決できると着想した。2023年度はNV センターと同様に基底三重項状態を形成し発光特性が期待されるジラジカルを設計し、その合成と物性解明に取り組んだ。ジラジカルは既知化合物から二段階で合成できシリカゲルカラムクロマトグラフィーおよびGPCを用いて精製することができた。トルエン溶媒中低温での電子スピン共鳴 (ESR) 測定では、微細構造をともなうシグナルと半磁場での禁制遷移が観測され、三重項状態の生成を確認することができた。また、時間分解電子スピン共鳴 (TRESR) 測定から量子センシングには必須の電子スピン偏極生成能力を持つことを明らかにし、光学測定から発光特性を持つことを明らかにした。一方、ジラジカルは光・熱安定性が低くレーザー照射下ではすぐに分解してしまったため、ODMR測定では三重項状態に由来するシグナルを検出することができなかった。現在、置換基の導入を行い安定性を向上させたジラジカルの合成および精製の検討を行っている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ODMR測定を用いた量子センシングには必須の発光特性と偏極特性をあわせ持つジラジカル分子の開発に成功したため、研究は進展したと言える。

今後の研究の推進方策

2023年度の結果をふまえ、2024年度は誘導化によりジラジカルの光安定性を向上させることで、ODMR測定での検出を可能にし、有機分子を用いた量子センシングを実現する。

次年度使用額が生じた理由

今年度は予定していた研究用のPCを購入しなかったためその他に差額が生じた。来年度は必要に応じ古いPCを買いかえることで差額を埋める予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)

  • [雑誌論文] m-Quinodimethane-based fused-ring triplet hydrocarbons2023

    • 著者名/発表者名
      Shimizu Akihiro、Arikawa Shinobu、Morikoshi Tetsuya、Shintani Ryo
    • 雑誌名

      Pure and Applied Chemistry

      巻: 95 ページ: 401~412

    • DOI

      10.1515/pac-2023-0208

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A Kinetically Stabilized Nitrogen‐Doped Triangulene Cation: Stable and NIR Fluorescent Diradical Cation with Triplet Ground State2023

    • 著者名/発表者名
      Arikawa Shinobu、Shimizu Akihiro、Shiomi Daisuke、Sato Kazunobu、Takui Takeji、Sotome Hikaru、Miyasaka Hiroshi、Murai Masahito、Yamaguchi Shigehiro、Shintani Ryo
    • 雑誌名

      Angewandte Chemie International Edition

      巻: 62 ページ: e202302714

    • DOI

      10.1002/anie.202302714

    • 査読あり

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公開日: 2024-12-25  

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