研究課題/領域番号 |
23KJ1680
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
萩原 幹花 九州大学, 理学研究院, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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キーワード | 植物間コミュニケーション / VOCs / 揮発性有機化合物 / ブナ / 繁殖 |
研究実績の概要 |
健全な個体が、隣接個体の傷害や食害による揮発性有機化合物(香り)を受容し、その後防衛反応を示す。この現象は「香りを介した植物間コミュニケーション」と呼ばれているが、長期優占する樹木や、森林生態系における意義は未解明の点が多い。そこで本研究では、以下の課題に取り組み、香りを介した植物間コミュニケーションの森林生態系における意義の解明を目指す。研究1「香りを介したブナにおける植物間コミュニケーション機構の解明」、研究2「香り受容による繁殖への影響を検証」 当該年度は研究1に関して、京都大学北白川試験地内においてブナ稚樹を用い、葉の切除によるVOCsの組成の変化を時系列で明らかにした。その結果、葉を切除した直後に「緑の香り」が多く放出されるが、1日後にはその放出が減少していた。3日後にはアルデヒドやアルカンなどの放出が多くなっていた。このことから、葉切除後に放出されるVOCsは、時系列で変化しその組成が各処理において異なることが明らかになった。 研究2に対しては、森林内大規模操作実験および開花結実調査を京都大学芦生研究林内ブナ自然林で実施した。月に一度葉のサンプリングを行い、葉内ホルモン量およびRNAの抽出・分析を実施済みである。次年度は、植物ホルモンおよび遺伝子の発現変動量を解析し、本操作実験による影響を検証する。また次年度は開花結実調査、及び葉のサンプリングを、京都大学芦生研究林にて継続予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は研究1に関して、京都大学北白川試験地内においてブナ稚樹を用い、葉の切除によるVOCsの組成の変化を時系列で明らかにした。その結果、葉を切除した直後に「緑の香り」が多く放出されるが、1日後にはその放出が減少していた。3日後にはアルデヒドやアルカンなどの放出が多くなっていた。このことから、葉切除後に放出されるVOCsは、時系列で変化しその組成が異なることが明らかになった。 研究2に対しては、森林内大規模操作実験および開花結実調査を京都大学芦生研究林内ブナ自然林で実施した。月に一度葉のサンプリングを行い、葉内ホルモン量およびRNAの抽出・分析を実施済みである。 また、研究2.においては、東北地方における調査地の追加を検討していた。今年度、調査地の候補になりそうなサイトの聞き取り調査を行ったが、追加で操作実験が可能な調査地は選定できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
研究1.において、ブナ稚樹を用いた追加の操作実験を検討している。いつサンプリングを行うかの時間的な課題があるが、課題解消のため、操作しやすい稚樹において直接ホルモン物質を散布し、時系列でサンプリングを行う。 研究2.においては、東北地方における調査地の追加を検討していた。今年度、調査地の候補になりそうなサイトの聞き取り調査を行ったが、追加で操作実験が可能な調査地は選定できなかった。代替案として、調査地を新潟県に変更し、これまで継続的に開花結実調査が行われている苗場での調査を検討している。 今年度は京都大学芦生研究林において、月1回の葉サンプリングを継続する。追加操作実験として、同林内の別の調査地を用い、直接SAを散布することによる、繁殖への影響を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
RNAの抽出キットの購入を翌年に延期したため、少額次年度使用額が生じた。
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