研究課題
スキルス胃癌の次世代プロテオミクス解析 (iMPAQT法)を行い、スキルス胃癌はスキルス胃癌以外の胃癌と比較してLDHAを含めた解糖系、TCA回路の代謝酵素の発現が有意に低く、スキルス胃癌ではスキルス胃癌以外の胃癌と比べて有意にCAFの細胞数が多かった。このことから、スキルス胃癌の腫瘍微小環境は代謝活性が低く、この一因として癌関連繊維芽細胞(CAF)が重要な役割を果している可能性を考え、スキルス胃癌のCAFに着目した。当科で胃切除術を施行したStageIIIのスキルス胃癌患者3例から胃癌組織を採取し、シングルセル遺伝子発現解析(scRNA-seq)を行った。対象群としてStageIIIのスキルス胃癌以外の胃癌患者11例の胃癌組織を用いた。遺伝子発現が異なる複数の細胞集団の中からCOL1A1の発現が高い細胞集団をCAFと判断し、抽出・再クラスタリングを行った。遺伝子発現が異なる8つのCAFの細胞集団を確認し、過去の報告に基づき3つの炎症性CAF集団、4つの筋繊維性CAF集団、1つの抗原提示CAF集団を同定した。3つのうち1つの炎症性CAF集団はスキルス胃癌症例でのみ認められ、スキルス胃癌特異的な炎症性CAFの細胞集団を明らかにすることができた。一方、胃癌免疫抑制性微小環境の形成に重要な役割を果す免疫抑制細胞を胃癌組織のシングルセル遺伝子発現解析と切除標本組織を用いて評価した。その結果、単球系骨髄由来抑制細胞 (M-MDSC)は他の免疫抑制細胞よりも免疫抑制機能関連遺伝子の発現が最も高く、M-MDSCが他の免疫抑制際細胞よりも最も強く予後不良と相関していた。以上から、M-MDSCが胃癌免疫抑制性微小環境の形成に重要であることが示唆され、この成果をGastric cancerに報告した [Tsutsumi C. Gastric Cancer. 2024;27(2):248-262]。
2: おおむね順調に進展している
スキルス胃癌患者のシングルセル遺伝子発現解析より、スキルス胃癌特異的な炎症性CAFの細胞集団を明らかにすることができた。また、単球系骨髄由来抑制細胞 (M-MDSC)が胃癌免疫抑制性微小環境の形成に重要であることが示唆され、この成果をGastric cancerに報告した。以上より、研究計画通りにおおむね進んでおり、(2)と判断した。
今後、炎症性CAFとM-MDSCとの細胞間相互作用を評価し、同定した炎症性CAFの発動変動遺伝子の中から治療標的候補分子の検索を行う予定である。そして、治療候補分子が標的になりうるかをIn vitro、In vivoで実証予定である。
今後の研究計画を実行するための研究費として使用するため。
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Gastric cancer
巻: 27(2) ページ: 248-262
10.1007/s10120-023-01456-4