研究課題/領域番号 |
23KJ1733
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
兒玉 拓巳 九州大学, 医学系学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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キーワード | 非小細胞肺がん / ベッチ数特徴量 / 再発 / 遺伝子発現 / 転移性脳腫瘍 / パーシステントトポロジー |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、早期非小細胞肺がんに対する手術と体幹部定位放射線治療(SBRT)の予後と関係するそれぞれの画像特徴量(特にベッチ数特徴量)を明らかにすることで、患者ごとの治療効果の経時変化を予測する手法を開発することである。また、令和5年度の研究目的は、早期肺がんに対してSBRTと手術の予後と関連するそれぞれの画像特徴量を明らかにすることであった。治療前の臨床特徴量とcomputed tomography(CT)画像の反転ベッチ数特徴量、従来レディオミクス特徴量を組み合わせることで、局所領域再発および遠隔転移について高リスク・低リスク群に患者を層別化した有意差を改善できることを報告した [Kodama, ICRPT 2013]。また、肺がんの予後と関連するとされるhomeodomain-only protein homeobox遺伝子発現量とCT画像特徴量の関連性 [Jin, Cancers. 2023] や、転移性脳腫瘍の原発巣推定で肺がんと関連するmagnetic resonance画像上の重要画像特徴量の究明 [Egashira, Phys Eng Sci Med. 2023] など、肺がんと画像特徴量の関連性を多角的に解析し報告した。一方、患者ごとの治療効果の経時変化を予測するためには、より予測性能と解釈性の高い画像特徴量が必要であると考えた。そこで、従来トポロジー特徴量と比較して画像上の穴構造の位置や階層構造の情報を残すことができるパーシステントトポロジーに基づく特徴量計算法を新たに導入し、肺がんの予後因子の一つであるepidermal growth factor receptor変異との関連性を解析した(論文準備中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度の研究目的は、早期肺がんに対してSBRTと手術の予後と関連するそれぞれの画像特徴量を明らかにすることであった。そこで、SBRT後の局所領域再発や遠隔転移の予後と関連する臨床特徴量やベッチ数特徴量などの画像特徴量を解析し、患者の再発リスク分類に有用であることを発見した。また、肺がん患者の全生存期間や無増悪期間と関係するhomeodomain-only protein homeobox遺伝子発現量の予測や原発巣が肺がんである転移性脳腫瘍の予測などSBRT以外の治療法や進行肺がんの予後との関連性についても究明した。さらに、肺がん患者の治療法選択や予後推定に用いられるepidermal growth factor receptor変異を予測するため、新たなパーシステントトポロジーに基づく特徴量計算法を開発し、従来法と比較して高い予測能を示すことが分かった。このように、今年度は肺がんの予後と画像特徴量の関連性を多角的に研究し、当初の研究計画通りおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の研究目的は、肺がんの画像・臨床特徴量と腫瘍細胞数の経時変化の関係を究明することである。肺がん患者の治療前とフォローアップのCTやPETなどの画像特徴量と腫瘍体積・細胞数を計算し、その相関を解析する。肺がんの治療前後の腫瘍体積や細胞数、遺伝子発現などの情報と医用画像上で腫瘍の不均一性を解析するトポロジー特徴量が関連する可能性があり、手法の検討を進めていく。また、SBRT後の腫瘍細胞数の経時変化を推定する数理モデルの検討も必要である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費として計上していた計算用サーバーの購入予定が次年度に変更されたこと。また、現在準備中である論文の投稿が次年度初頭となる予定であることから次年度使用額が生じた。次年度に繰り越された使用額については先述した用途に用いることが計画されており、次年度に計画されていた直接経費の使用についても、学会参加費用および論文投稿費用、研究データ保存用機器の購入費用に充てるとした従来の計画から変更はない。
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