研究課題/領域番号 |
23KJ1773
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
木田 朋輝 熊本大学, 自然科学教育部, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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キーワード | 心肥大の進行抑制 / 臓器送達性評価 / TRPC6遺伝子発現抑制 / 顕微鏡観察 |
研究実績の概要 |
遺伝子発現抑制技術の一つであるsiRNAは希少疾患を標的とできる技術であるものの、「導入する核酸」の生体内安定性や臓器送達性を向上させることが求められている。そのためsiRNAに種々の化学修飾(人工核酸やリガンドなど)を導入する必要があるが、それにより薬効が低下することが懸念されている。 このような背景から申請者らは標的mRNAの構造変化に基づく新規遺伝子発現制御技術(RNA hacking技術)を開発した。本技術はStaple核酸と名付けた短鎖核酸を利用し、標的mRNA上にRNA G-quadruplex の形成を誘導する。本研究ではStaple核酸の医薬品化を志向して、種々の化学修飾を導入したStaple核酸の評価を行いStaple核酸の医薬品応用を目指す。 初年度である令和5年度は、心肥大関連遺伝子であるTRPC6を標的とし、L-aTNAで構成されたStaple核酸(L-aTNA Staple)の機能評価を行った。本検討では、心肥大モデルマウスにL-aTNA Stapleを投与しフェノタイプ解析を行った。その結果、L-aTNA Staple存在下でのみ心肥大に伴う心機能の低下及び心筋線維化を抑制することができ、薬効を確認できた。また、L-aTNA Stapleの両末端に蛍光分子を修飾し、in vivo用のTransfection試薬を利用した時の各臓器送達性を顕微鏡観察により評価した。その結果、心臓、肝臓、腎臓、肺へ核酸が送達されることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
L-aTNA Stapleを心肥大モデルマウスに投与することによりその病態進行を抑制し、医薬品応用の可能性を見出すことができた。また、in vivo用のtransfection試薬を用いることで各臓器への送達性を確認することができた。現在の実験系により、各臓器への送達性を確認できるため、今後Transfection試薬の仕様を脱却しDDS技術の導入を考えている段階であり、概ね当初の予定どおり進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、 Transfection試薬そのものの毒性を回避しDDS技術をStaple核酸に導入するために、Transfection試薬の利用からの脱却を目指す。そこでL-aTNA Stapleに、①細胞膜透過性向上させるためにジスルフィド基やチオール基、②標的臓器への送達性を向上させるために心臓に局在することが可能なCa拮抗薬(ニフェジピン、アムロジピン、ニホニジンなど)を導入する。その後両末端に蛍光分子を修飾し、マウス体内に導入後の体内分布を顕微鏡観察することで評価する。上記方法の検討後、放射性標識をしたStaple核酸を動物体内に導入し、臓器の滞留時間等を算出する予定である。
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