研究課題
本研究は、CO2の選択的活性化に向けたV族金属酸化物クラスター触媒の反応場制御を目的とする。触媒設計指針を得るため、令和5年度は強塩基性のタンタル酸化物クラスター[H2Ta6O19]6- (Ta6)を対象に、塩基点での特異なCO2活性化機構を調べた。CO2固定化反応としてスチレンオキシドへの環化付加反応を実施し、Ta6の塩基触媒作用を確認した。Ta L3端高エネルギー分解蛍光検出X線吸収端近傍微細構造 (HERFD-XANES) スペクトルを用いたその場観察と量子化学計算を合わせることで、CO2がTa6の末端酸素原子上に単座配位して活性化されることを解明した。またCO2固定化反応に不活性で知られるタングステン酸化物クラスター[W6O19]2-に対し、Taに一置換した[TaW5O19]3- (TaW5)でCO2固定化反応を実施したところ、目的生成物が得られた。このことから、Ta置換が金属酸化物クラスターの求核性を高め、CO2の活性化を可能にすることが示された。本研究ではさらに、新しい複合クラスター触媒の創製も行った。まず手始めに、サイズ及び電荷の異なるモリブデン酸化物クラスター[Mo6O19]2- (Mo6)及び[PMo12O40]3- (PMo12)と、水素活性化能を有する配位子保護金属クラスター[MAu8(PPh3)8]2+ (M=Pd, Pt)の複合塩を合成した。X線回折から、MAu8-Mo6は岩塩型構造を、MAu8-PMo12は塩化セシウム型構造の結晶を有することが示唆された。とりわけMAu8-Mo6では光学特性が変化し、X線吸収微細構造スペクトルから、MAu8がバタフライ型と呼ばれる構造異性体として固体化していることが明らかになった。Ta6や等構造体のNb6との複合化もすでに検討しており、岩塩型構造とは異なる組成比を有する新規複合クラスター触媒の創製が期待される。
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