研究課題/領域番号 |
23KJ1810
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研究機関 | 神奈川県立保健福祉大学 |
研究代表者 |
佐々木 亮樹 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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キーワード | 知覚学習 / 体性感覚 / 一次体性感覚野 / 脳磁図 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、脳磁図・核磁気共鳴装置(3T)を使用して体性感覚に寄与するバイオマーカーを特定し、このバイオマーカーを使用して効果的な知覚学習(持続的な体性感覚刺激によって体性感覚機能が高まる現象)を創出することを目的としている。初年度(2023年)では、体性感覚に貢献するバイオマーカーの特定を中心に研究を進めた。実験では、42名の健常成人を対象とし、空間的な体性感覚処理を反映する二点識別覚検査、脳磁図を使用した体性感覚誘発磁界と安静脳磁場、核磁気共鳴法による脳構造画像の計測をそれぞれ実施した。脳磁図の解析では、末梢電気刺激によって誘発した体性感覚誘発磁界を使用してS1の抑制活動と安静脳磁場によるS1をシードとした全大脳のネットワーク強度を機能的結合解析によって算出した。核磁気共鳴装置では、全大脳における皮質厚(灰白質の厚さ)の算出を行った。その結果、S1における抑制活動と二点識別覚のパフォーマンスの間で有意な相関関係を認めた。安静時のS1を起点とした全大脳に渡る機能的結合では、二点識別覚閾値とS1-上側頭頂葉、S1-角回、S1-上側側頭回のそれぞれの大脳ネットワークに関連があることが示された。一方、二点識別覚のパフォーマンスといずれの大脳領域における皮質厚との関連においては、有意な相関は認められなかった。本研究結果より、二点識別覚のパフォーマンスを反映するバイオマーカには、S1の抑制活動および特定の大脳ネットワークが重要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度では、二点識別覚に関与するバイオマーカーを特定し、国際誌にこの研究成果を発表することができた(Sasaki et al. 2023, Cerebral Cortex)。また、二点識別覚だけでなく、空間的な体性感覚処理に関与する方位弁別覚においても解析を行っている最中である。今年度と次年度では、特定したバイオマーカーを使用して効果的な知覚学習法の開発に向けて取り組む予定である。初年度を通して、バイオマーカーの探索に進展が見られたため、本研究計画はおおむね順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、体性感覚に関与する一次体性感覚野の興奮性および特定の大脳ネットワークを高める知覚学習戦略の開発を目指していく。具体的には、体性感覚処理に重要な個々の脳波律動(α帯域とβ帯域)に着目し、個々の周波数に応じた末梢電気刺激を介した知覚学習を介入として行い、S1および大脳ネットワーク、体性感覚機能に及ぼす影響を解明する予定である。本計画は、すでに本大学の倫理委員会に承認されているため、健常成人を対象として実験の事前準備をしている段階である。
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次年度使用額が生じた理由 |
この余剰金は、当初予定していた特定の消耗品の単価が予想よりも低かったことにより生じた。残りの7,000円に関しては、次年度の研究活動で有効活用する。この小額の資金では高価な物品の購入は難しいが、この余剰金を使用して研究テーマに関連する最新の論文や資料を電子版で購入する予定である。次年度では、ビックデータ解析に使用する高性能ノートパソコンの物品購入やデータ計測・学会発表のための出張費、論文投稿費用に充てる予定である。
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