研究課題
古くから腫瘍化因子として知られるc-Mycはがんの転移促進作用も併せ持ち、その過程には上皮間葉転換 (EMT) が重要な役割を果たすことが示唆されている。EMT研究における課題としてin vitroおよびin vivoで得られる研究結果に乖離が生じることが挙げられ、生体内での腫瘍の時間空間的多様性を考慮した研究がその問題解決に必要である。本研究では、in vitroにおいてc-MycによるEMT誘導機構を明らかにするとともに、個体レベルでEMTを起こしたがん細胞の生体内動態を可視化できるin vivoイメージングシステムを構築し、c-Mycにより誘導されるEMTの生体内動態を継時的かつ俯瞰的に解析することを目的とした。in vitroにおけるc-MycによるEMT誘導機構の解析では、間葉系マーカーVimentin (Vim) レポーターを用いて、EMTを蛍光可視化可能な細胞株A549とNMuMGを樹立した。A549/Vim-RFP細胞にc-Mycを安定的に発現させ、ウエスタンブロット法やRT-PCR法などの手法を用いてEMTとともに変動する因子を探索したところ、いくつかの候補因子を見出した。その過程で、A549細胞の遊走性制御に寄与し得る因子としてID3を見出したため、ID3の機能解析も並行して実施した。A549細胞においてID3をノックダウンし、遊走能及び転移能変化を評価したところ、ID3が肺がんの転移抑制に寄与することが示唆された。さらに、ID3はがん抑制遺伝子産物p53の新規標的遺伝子であることを明らかにし、論文発表した。
2: おおむね順調に進展している
今年度の目標として、(1) in vitroにおけるc-MycによるEMT誘導機構の解析、(2) EMTイメージングシステムの構築を予定していた。(1)については順調に進んでおり、(2)については若干検討が遅れているものの、全体としてはおおむね順調に進捗していると考えられる。
当初掲げた計画に沿って、本年度はEMTイメージングシステムを用いた検討等により、c-MycによるEMT誘導機構に寄与する因子についての解析を引き続き進め、発展的な成果としてまとめることを目指す。
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Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 708 ページ: 149789~149789
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