研究課題/領域番号 |
23KJ1837
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
佐倉 亮 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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キーワード | 高力ボルト摩擦接合継手 / 鋼桁連結部 / 協働すべり / 変形支圧限界 / ボルト孔変形量 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,高力ボルト摩擦接合鋼桁連結部(以下,桁接合部)が有する協働作用を考慮した総すべり挙動およびすべり後挙動における限界状態の設定とその耐力式を提案することである. 2023年度は,「①曲げとせん断を受ける桁接合部の協働すべり挙動の解明」と「②主桁断面形状と桁接合部のボルト孔変形量の関係の解明」について,FE解析より検討した. ①の協働すべり挙動に対しては,初期すべり荷重と初期勾配から非線形性が発生し始める点は一致し,フランジ継手およびウェブ継手の最外縁行周辺の相対変位が大きく増加することを明らかにした.また,総すべり荷重と荷重-たわみ関係の曲線が横ばいになる点と一致し,中立軸周辺を含む桁接合部全体の相対変位が大きく増加することを明らかにした.せん断が作用することで,曲げによる作用力(水平方向)との合成力が最も大きくなる最外縁行のすべりが誘発されること,総すべりに対しては,曲げのみの場合において有効に働かない中立軸周辺がせん断力に抵抗することを明らかにした.それらの協働すべり挙動を踏まえて,設計すべり耐力式を提案し,既往研究で実施された載荷実験結果を-3~+1%の精度で推定できた. ②のすべり後支圧挙動に対しては,ボルト孔変形がボルト軸径の5,10%に到達した時の支圧耐力係数は短冊継手と同様に,端抜け破断耐力と純断面破断耐力の比率と相関を有することを明らかにした.また,断面二次モーメントの比率から算出した桁接合部の支圧耐力係数は,短冊継手のそれより小さくなることが分かった.それらの結果を踏まえて,変形支圧限界耐力を提案し,既往研究で実施された曲げとせん断を受ける桁接合部の載荷実験を2%の精度で推定できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は,FE解析を中心に,曲げとせん断を受ける桁接合部の協働すべり挙動の定量評価と,すべり後支圧挙動・ボルト孔変形量の定量評価を行った.その結果より,研究目標である協働すべり耐力式の提案とボルト孔変形量を指標とした変形支圧限界耐力式の提案を行い,既往研究の実験結果との整合性を確認することができた.
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今後の研究の推進方策 |
接合部全体として合理的なボルト本数とすることや,終局限界に到達した時の変形量を適切に把握・設定するため,桁接合部特有の挙動である協働作用の考慮,すべり後支圧挙動における変形性能の把握,それらを踏まえた桁接合部全体の耐力や各限界状態が有する安全余裕を定量的に考慮した限界状態設計法の構築を目指す.具体には,桁接合部の実挙動を考慮した基本力学モデルの構築・精査を行い,設定した使用限界・終局限界に対する部分係数の設定方針についても検討を進める.それらを踏まえ,2023年度に提案した協働すべり耐力式と変形支圧限界耐力式を組み込んだ限界状態設計法を提案する.
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次年度使用額が生じた理由 |
最も重要視していた協働すべり耐力式と変形支圧限界耐力式の提案することができたが,それを組み込んだ限界状態設計法の構築・妥当性検証に時間を要したため,その検証解析に用いる計算機の購入が遅れたことが次年度使用額が生じた理由である.また,次年度初めに計算機の導入を進める予定である.
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