研究課題/領域番号 |
23KJ1873
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
原口 麻子 北里大学, 獣医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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キーワード | 蚊 / マラリア原虫 / インジェクション / 原虫保有数規定分子 / オーシストカプセルタンパク質 |
研究実績の概要 |
マラリア原虫は蚊が媒介するが、蚊によって媒介する原虫数、すなわち蚊のマラリア原虫保有数が異なることが知られている。蚊のマラリア原虫保有数は伝播能に影響を与える重要な要素であるため、蚊のマラリア原虫保有数を規定する分子を明らかにすることを目的として本研究を実施している。 遺伝的背景が近縁であるにもかかわらず、個体間のマラリア原虫保有数の差が大きい“感受性蚊”(第7世代)を用いて、GFPによる選別をさらに1世代行った。その結果、感受性蚊(第8世代)では個体間の原虫保有数の差が小さくなり、野生型と差がなくなった。マラリア原虫保有数の差は、感受性蚊(第8世代)の累代を繰り返しても同様だった。このことから、感受性遺伝子は何らかの理由で固定化に揺らぎが起こり、表現系としての感受性が損なわれることが確認された。しかしながら、マラリア原虫保有数の異なる蚊の個体間比較が困難となった。 そこで、並行してインジェクション法を用いた蚊のマラリア原虫保有数を規定する分子の解析を行った。in vitro培養したオーキネートを蚊の血体腔にインジェクションし感染させるインジェクション法では、蚊の体内に侵入する原虫数を操作でき、雌蚊以外にもマラリア原虫を感染させることが可能となる。これまでの研究で、1.インジェクションした雌雄の蚊にオーシストが形成される、2.形成されたオーシストの一部が血体腔に浮遊する、3.雄では雌よりもオーシスト形成数が多いことが確認された。さらに、インジェクションした雌雄蚊を用いて次世代シークエンスを行い、その遺伝子発現変動から蚊における原虫保有数を規定する分子候補を選別した。加えて、インジェクションにより形成されたオーシストを収集して、網羅的にタンパク質を同定し、蚊の分子と相互作用すると考えられるオーシストカプセルタンパク質候補を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
感受性蚊を用いた個体間比較は困難となったものの、インジェクション法を用いた雌雄蚊の解析により、原虫保有数を規定する分子の候補を選別した。また、オーシストカプセルタンパク質の同定に成功したので、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、雌雄蚊の遺伝子発現の比較により選別した原虫保有数を規定する候補分子のRNA干渉法による機能解析や、オーシストカプセルタンパク質の局在および機能解析を試みる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験動物の飼育・管理に人件費を用いなかったことから、139,128円の次年度使用額が生じた。次年度の物品購入費として使用する予定である。
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