研究課題
硫化水素は抗がん剤による重篤な副作用を減弱させることが報告されており、新たな創薬シーズとして研究が進められている。本研究では、メトヘモグロビンをリポソームで内包した (メトヘモグロビン小胞体) に硫化水素ナトリウムを混合することで硫化水素付加メトヘモグロビン小胞体を作製し、新たな硫化水素送達体としての有用性を検討した。物性評価において、透過型電子顕微鏡による構造や粒子径などの物理化学特性、さらに製剤特性 (硫化水素の付加量や放出性) を明らかにした。in vivoでの有効性評価では、硫化水素付加メトヘモグロビン小胞体を投与したシスプラチン誘発性腎障害モデルマウスの腎機能パラメータ (血中尿素窒素、クレアチニン) の上昇及び腎組織形態変化を抑制し、腎保護効果が確認された。また、がん細胞を皮下移植した担癌マウスにシスプラチン及び硫化水素付加メトヘモグロビン小胞体を併用投与した結果、硫化水素付加メトヘモグロビン小胞体はシスプラチンによる抗腫瘍効果に影響を及ぼさずに腎保護効果を示した。さらに、健常マウスにおける安全性評価において、硫化水素付加メトヘモグロビン小胞体の投与は放出される硫化水素による中毒症状やメトヘモグロビン小胞体による臓器毒性を誘発せず、高い生体適合性を備えていた。以上の結果から、硫化水素付加メトヘモグロビン小胞体は新たな硫化水素送達体として抗がん剤の有効性を担保しながらも副作用を減弱させ、高い安全性を備えて利用できる有望な製剤になると考えられた。
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Toxicology and Applied Pharmacology
巻: 481 ページ: 116752~116752
10.1016/j.taap.2023.116752