研究課題/領域番号 |
23KJ1969
|
研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
井上 隆 東京理科大学, 創域理工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
|
キーワード | 固液混相乱流 / GAL-LESモデル / 河川橋脚 / 局所洗掘 / 馬蹄形渦 / 流砂 / 移動床・固定床解析 / 豪雨 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,ミクロ・マクロスケールに基づく豪雨時の河川橋梁被災リスク評価手法を開発することである.橋梁被災の主要因となる橋脚局所洗掘は橋脚直上流部から側面にかけて発生する馬蹄形渦(Horseshoe Vortex,HV)に起因するものであり,この渦構造を解明することが重要である.そのため,本年度(R5)はミクロスケールに着目し,橋脚周辺の局所洗掘に関する数値解析を実施し,これまで明らかにされていない馬蹄形渦と流砂の相互作用効果(混相流効果)を解明した.ここでは,流体運動と同様に土粒子運動を解き,流体-粒子間または土粒子同士の相互作用効果を反映可能な固液混相乱流モデルを用いた.また,橋脚周囲の洗掘深の時系列変化を確認し,準動的平衡状態を迎えた時点の河床形状を固定床解析の計算条件として計算し,移動床解析と比較することで混相流効果を確認した.以下に,本年度に得られた研究成果を列挙する. 1)橋脚周辺の洗掘深縦横断分布:本解析により得られた洗掘深と実験値と概ね一致していた. 2)3次元馬蹄形渦構造の変化:両計算条件共に既往研究とほぼ同様に,複数の渦構造(HV1,HV2,BAV)の他に,既往研究では未確認の剥離起源の渦(HV1とは逆回転)Separation Vortexが確認され,固定床解析ではその構造が顕著に現れた.一方,移動床解析では,橋脚周囲での低濃度粒子の巻き上げにより渦構造が直接的な影響を受け渦自体がより間欠的になったと示唆される. 3)馬蹄形渦構造の変化に関する物理的考察:固定床解析では局所洗掘に起因するHV1は洗掘形状に沿った形となっている.一方,移動床計算では固定床計算とは大きく異なり,橋脚直上流部で発生する低濃度土砂の巻き上げ効果(混相流効果)により,HV1の形状や位置を変化させ,さらに渦度を弱めている.これは,渦度方程式のトルク項によるものであると示唆された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
円柱周りの流動・渦構造を詳細に解析した既往研究では,複数の渦構造が確認されているが,この計算条件は固定床としているものである.実現象では橋脚周辺で局所洗掘が発生することで被害に至ることから,移動床条件下での流砂と馬蹄形渦構造の相互作用効果を解明する必要がある.これらを考慮した本研究では,低濃度土砂の巻き上げ効果(混相流効果)により,馬蹄形渦の形状や位置を変化させ,さらにその渦度を弱めていることが明らかとなった.これらをより力学的に考察するために,混相流版の渦度方程式を導出し,流体相と固体相の相互作用力から構成されるトルク項に着目したところ,渦を弱める方向に回転していることが明らかとなったため.
|
今後の研究の推進方策 |
本解析条件には水面変動の取り扱いに課題を残しており,水面の変動量を0として計算している.フルード数Frが小さい場合(Fr=0.1-0.2)は水面変動量を0として解析することが多々あるが,本解析の計算対象となる模型実験のFrは0.5-0.6であり,水面を動かした条件で計算することが求められている.そのため,本モデルにVOF(Volume of Fluid)法を組み込み,再度計算することで水面変動量が0の計算結果と比較し,さらなる流砂と馬蹄形渦の相互作用効果を考察に取り組む予定である.VOF法を組み込むことで,適用範囲も拡大させ,橋台や橋桁周りの流動解析も考慮した橋梁一体解析にも取り組みたいと考えている.
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として,国内外の学会発表や留学のための旅費として補填するため. 使用計画としては,国内学会3件,国際学会1件,さらに,5か月間のIowa大学への留学を行うための旅費として計上する.また,数値シミュレーションの保存用SSDの購入や英語論文の校正料,投稿料として計上する.
|