研究課題/領域番号 |
23KJ2022
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
高橋 宙暉 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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キーワード | 次第書 / 九条本 / 古記録 / 式 / 儀式 |
研究実績の概要 |
本研究は、宮内庁書陵部所蔵九条本の次第書を主な検討材料として、利用方法や伝来の過程、古記録などその他の史料との関係を明らかにし、そこから貴族社会や儀式の変化を見出すものである。 初年度の2023年度は、次第書を意義づけるための基礎的な作業として、未翻刻史料の九条本次第書を活字化する作業を主に行った。九条本の次第書は平安時代の後期以降で制作年が不明のものも多いため、年紀の判明するものを中心に扱い、適宜原本調査を並行して行った。また、次第書がどのような儀式の場合に保管され伝来したのかということを知るために、九条本全体の網羅的な目録を作成し、その特徴や傾向の把握につとめた。この作業によって、次第書がどのような過程で作成され、一次的な利用だけでなく二次的な活用といった、次第書を取り巻く環境を知るための基礎的な準備を整えることができた。その一部は、史料紹介として学術雑誌に掲載された。 あわせて、古記録に見える次第書に関する記述を10世紀から13世紀を対象に事例を収集した。調査の過程で、現存する次第書に古記録と明らかな引用関係を有するものがあることを発見した。つまり、当時の貴族が日記を執筆する上で、次第書を参照引用していたのである。この成果は現在学術論文へ投稿中である。このほか、研究が十分にされてこなかった儀式に際して有識に長けた公卿が撰進したとされてきた「式」と深い関係にあることが判明した。この内容は、史学会大会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
九条本次第書の全体的な把握と内容の調査が終了したことで、本研究の目的の一つである次第書研究の論理的枠組みを提示する土台ができた。また、古記録や儀式運営との関わりの中で次第書を論じることができる点をあらたに示せたと考えている。 以上より、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる来年度は、本年度の成果をもとに当初の計画通り次の3点について取り組む。 1、史料としての次第書を体系的に捉える。翻刻作業も引き続き行い、専門知識の提供を2名の方にお願いすることで、なるべく多くの活字化を進める。 2、次第書の利用方法の変遷について、その背景に留意しながら時代ごとに分析し、貴族社会の変化を見出す。 3、九条家以外に伝わる次第書を調査し、それぞれの差異を明らかにする。 今年度の調査の過程で、次第書の利用法を追っていくと、その移動をもって次第書が人と人を媒介し貴族社会における知のネットワークを支えていたことがわかってきた。こうしたことも考慮しながら、次第書を研究の俎上にのせ、その体系的な解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由については、当初参加予定であった学会出張に諸般の事情により参加できなかったことにある。 使用計画については、新たに必要が生じた史料調査および専門知識の提供に使用する予定である。
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