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2023 年度 実施状況報告書

老化による筋小胞体カルシウム枯渇に対する応答性変化と骨格筋機能への影響の解析

研究課題

研究課題/領域番号 23KJ2055
研究機関早稲田大学

研究代表者

竹村 英子  早稲田大学, スポーツ科学学術院, 特別研究員(RPD)

研究期間 (年度) 2023-04-25 – 2026-03-31
キーワード骨格筋 / カルシウム / Stim1 / 老化
研究実績の概要

小胞体内のカルシウムイオン濃度低下に応答した細胞内へのカルシウムイオン流入は,Store-Operated Calcium Entry (SOCE)と呼ばれ,免疫細胞をはじめとする細胞の機能維持に重要な役割を果たす.SOCEは,小胞体膜上に存在するカルシウムセンサーStim1が,カルシウムイオン濃度の低下を感知し,細胞膜上に存在するOrai1と相互作用することで起こる.Stim1やOrai1に遺伝子変異が挿入されると,緩やかに筋力低下が進行する筋疾患が発症することが報告されており,筋機能とSOCEに密接な関わりがあると考えられている.また,骨格筋の収縮力や可塑性などの筋機能維持に関わることが報告されている.しかし,SOCEの変化がどのように筋機能に影響するのか,その詳細は不明なことが多い.本研究は,老化による筋力低下に着目し,SOCEと筋機能との関連を明らかにすることを目的とした.
本年度は,筋機能にSOCEが関係しているのかを調べるため,持久力や収縮速度の異なる速筋と遅筋でSOCEを比較した. 2ヶ月齢の野生型マウスから,速筋である長趾伸筋,足底筋と遅筋であるヒラメ筋を採取し,SOCE関連分子の発現とカルシウム動態を解析した. SOCEの動態は,長趾伸筋とヒラメ筋から単一筋線維を採取し,カルシウムインジケーターFluo-4を用いた.速筋と遅筋で,Stim1とOrai1の発現および,SOCEの動態に差が見られた.持久力や収縮速度の違いにSOCEが関わっている可能性を示唆する結果であり,さらに解析を進めていく.
初年度で,実験系の確立が進められたため,老齢マウスを用いて同様の解析を行い,老化による筋力低下とSOCEの関わりを明らかにしていく.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

初年度は,実験系の確立に主眼を置き,若齢野生型マウスを用いて,収縮速度と持久力の異なる速筋と遅筋でSOCEを評価した.SOCEを担う分子であるStim1とOrai1について,RT-qPCRで遺伝子の,Western Blottingでタンパク質の発現を調べた. 遅筋でStim1とOrai1が,mRNAとタンパク質ともに高く発現していた.さらに,長趾伸筋とヒラメ筋から単一筋線維を採取し,SOCE動態を観察した.長趾伸筋とヒラメ筋でSOCEの速度やカルシウム流入量が異なることを示唆する結果が得られた.さらに,筋線維型によるSOCE動態の違いを解析するため,カルシウムイメージング後の筋線維型の解析系の確立を進めている.
Stim1のWestern Blottingでは,骨格筋では複数のアイソフォームが発現していることを示す結果が得られた.現在,報告されているStim1のアイソフォームはStim1,Stim1L,Stim1A,Stim1Bの4種類であり,骨格筋ではStim1とStim1Lの発現が高く,Stim1AとStim1Bの発現は非常に低いとされている.しかしながら,マウスの筋芽細胞も用いた解析で,骨格筋で恒常的に発現しているStim1は少なくとも3種類はあることがわかった.筋芽細胞でも見られたStim1のアイソフォームの配列を解析し,すでに報告されているStim1アイソフォームと比較を進めている.
骨格筋におけるSOCEの生理的な役割を理解するため,骨格筋特異的にStim1を欠損するマウスの作製を進めている.The Jackson LaboratoryからStim1floxマウスを購入し,受入研究室が所有するMyoD-iCreマウスとの交配を進めている.まだ,Stim1欠損マウスは得られていないものの,順調にマウスの数が増えており,早いうちに実験が開始できる予定である.

今後の研究の推進方策

初年度は,遅筋と速筋のSOCE動態を解析した.若齢の野生型マウスを用いることで,予定通りに実験系の構築を進められた.本年度の研究を通して,骨格筋にはすでに報告されている2種類に加えて,別のStim1アイソフォームが発現していることがわかってきた.骨格筋でのSOCEの機能について理解を深めるためにも,新たなStim1アイソフォームの同定とその機能の解析をする必要が生じている.研究計画に加えて,骨格筋に発現するStim1アイソフォームについても精査していく.
本研究の目的は,老化による筋力低下とSOCEとの関係を明らかにすることであり,24ヶ月齢の老齢マウスを用いることが不可欠である.令和6年度中に24ヶ月齢を迎えるマウスを十数匹飼育しており,老齢マウスを用いた実験を計画的に進めていく.初年度に確立した,SOCE関連分子の発現とSOCE動態の解析に加え,老化進行度の指標の評価と,持久筋力をはじめとした筋力測定系も加える予定である.
さらに,骨格筋におけるSOCEの生理的な役割を理解するため,骨格筋特異的にStim1を欠損するマウスを作製し,解析する.初年度は,Stim1 floxマウスを購入し,受入研究室が所有するMyoD-iCreマウスと交配を進めた.体重,筋力や筋線維型などを基準としてコントロールマウスを検討してく.骨格筋特異的Stim1欠損マウスとコントロールマウスの2ヶ月齢,4ヶ月齢,6ヶ月齢,12ヶ月齢,24ヶ月齢の時点で,SOCEおよび,筋力や筋線維型をはじめとする包括的な筋機能解析を,令和6年度から順次実施していく予定である.

次年度使用額が生じた理由

特別研究員奨励費(雇用PD分)学術条件整備の次年度使用分

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Antioxidants restore store‐operated Ca<sup>2+</sup> entry in patient‐iPSC‐derived myotubes with tubular aggregate myopathy‐associated Ile484ArgfsX21 STIM1 mutation via upregulation of binding immunoglobulin protein2023

    • 著者名/発表者名
      Sakai‐Takemura Fusako、Saito Fumiaki、Nogami Ken'ichiro、Maruyama Yusuke、Elhussieny Ahmed、Matsumura Kiichiro、Takeda Shin'ichi、Aoki Yoshitsugu、Miyagoe‐Suzuki Yuko
    • 雑誌名

      FASEB BioAdvances

      巻: 5 ページ: 453~469

    • DOI

      10.1096/fba.2023-00069

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] STIM1変異によるTubular aggregate myopathy患者の iPS細胞を用いた病態解析2024

    • 著者名/発表者名
      竹村 英子,斉藤 史明,野上 健一郎,丸山 友輔,武田 伸一,青木 吉嗣,鈴木 友子
    • 学会等名
      第9回日本筋学会学術集会

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公開日: 2024-12-25  

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