研究実績の概要 |
高分子溶液が引き起こす水/水ミクロ相分離現象により生じるミクロ液滴とガラス細管を組み合わせた実験に理論計算を援用し、生物が自律的に形態形成を行うメカニズムに迫ることを目指し、3つの研究を行った。 ①PEG/ゼラチン混合溶液を、化学的修飾を施した細管に充填し温度を下げると相分離とゼラチンのゲル化が起こり、細管内で均一サイズのミクロゲルが形成されることがわかった。DNAを添加した場合、DNAを内包した細胞に似た構造のミクロゲルが自発的に創生すること、サイズや形を維持したまま細管からバルク水中に取り出せることを明らかにした。更に、ゲルの融点以上の温度であっても、DNAを内包した液滴同士は融合が抑制されることを見出した。カーン・ヒリアード型のモデルに細管内壁の化学修飾の影響を考慮した境界条件を導入した理論計算により、相分離構造を再現した。(M. Shono, et al., Small、Frontispieceに選出) ②DNA内包液滴同士は融合が抑制されることについて、界面のドナン電位とゼータ電位の測定結果から、負に帯電したDNA内包液滴同士の静電反発により融合が抑制されていることを見出した。(M. Shono, et al., Chem. Lett.) ③3成分の高分子溶液(PEG/DEX/ゼラチン)を、化学的修飾を施した細管内で相分離させると、PEG相中にDEX液滴とゼラチン液滴が交互に配列した構造が自発的に生成し、少なくとも8時間安定であることを見出した。カーン・ヒリアード方程式を用いた理論計算により、相分離構造を再現した。非平衡閉鎖系でミクロスケールの規則構造が安定に形成する現象は、生命やその他の自然現象でも起こっている可能性がある。(M. Shono, et al., ACS Macro Letters、Supplementary Cover Artに選出)
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