研究課題
本年度の研究計画では、(1)天の川銀河円盤に属する赤色超巨星に着目し、その近赤外線高分散分光観測(チリ・Las Campanas観測所・Magellan Clay 6.5m望遠鏡・WINERED分光器)ならびに得られた観測データの化学組成解析、(2)2年目の研究に向けて、オーストラリアのSiding Spring観測所の3.9m AAT望遠鏡に搭載された2dF/HERMES多天体分光器を用いた、大小マゼラン雲に位置する若い恒星の可視光高分散分光観測、の2点を計画していた。うち前者に関しては、2023年6月に観測を実施し、研究に必要な天体の約半数の観測を行うことができた。また、私がこれまで開発してきた晩期型星の化学組成決定ソフトウェアをいくつかの面でアップデートし、モデルスペクトルを用いた観測スペクトルの再現性の向上、鉄以外の元素の化学組成の決定精度の向上、などを実現した。以上の成果の一部をまとめた論文を執筆中である。また、本ソフトウェアを用いて天の川銀河円盤に位置するCepheid型変光星の化学組成を決定した結果をMatsunaga, Taniguchi et al. (2023)として共著論文で発表した。後者に関しては、Gaia DR3カタログなどの種々の天体カタログを用いて、大小マゼラン雲に属する観測対象として適した天体のリストの作成を行ったものの、2dF装置の故障により観測が取りやめとなった。これに対し、代替として、WINERED分光器を用いて大小マゼラン雲に属する赤色超巨星の近赤外線高分散分光観測を実施した。得られたデータを今後解析し、大小マゼラン雲の若い恒星の化学組成を明らかにできると期待している。また、本研究計画の基盤となる、赤色超巨星の基本的な大気パラメーターの決定も可能となると期待している。
1: 当初の計画以上に進展している
当初予定していた観測とデータ解析のうち、装置故障により観測取りやめとなったもの以外を実施できた。また観測取りやめに対応し、当初予定していなかった観測研究を開始できた。
1年目に取得できた天の川銀河と大小マゼラン雲の赤色超巨星のスペクトルの解析を進める。
観測による出張回が減ったことなどを理由として次年度使用額が生じた。翌年度以降に、本研究計画の新たな展開のために必要となる論文出版費などとして使用することを計画している。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
Publications of the Astronomical Society of the Pacific
巻: 136 ページ: 014504~014504
10.1088/1538-3873/ad1b38
The Astrophysical Journal
巻: 954 ページ: 198~198
10.3847/1538-4357/aced93