研究課題/領域番号 |
23KJ2155
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
田中 真仁 国立遺伝学研究所, 遺伝メカニズム研究系, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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キーワード | マウス初期胚 / lamin B1 / 核の力学 / 物性計測 |
研究実績の概要 |
マウス初期胚発生における核膜Laminの減少と核の軟化が持つ発生生物学的な機能を明らかにするために今年度は、1)初期胚の核膜Laminの動態制御メカニズムの同定、2)Laminの減少がいかに核の物性変化に関与するのかを調べた。さらに、3)核膜Laminの量的変化とそれに伴う核の物性変化がいかに胚発生に関与しているかについても調べた。具体的な研究成果を以下に記述する。 1)蛍光プローブで標識したlaminの高解像ライブイメージングとlaminの免疫染色を行った結果、4種類のlamin (A/C, B1 and B2)のうち、lamin B1が2細胞期特異的に減少していることが分かった。薬剤阻害実験やlamin B1の変異体を使ったライブイメージングによってlamin B1が2細胞期で減少する分子制御機構を明らかにした。また、lamin B1の分解経路も同定した。 2)次に上記で使用した阻害剤や蛍光プローブで標識したlamin B1を使い、核膜にlamin B1を過剰に局在させたときの2細胞期胚の核の物性を独自開発したガラスキャピラリー法を用いて計測した。その結果、lamin B1を過剰発現させた2細胞期胚の核は未処理の2細胞期胚の核に比べて硬さが増加し、また弾性的になった。 3)さらに、lamin B1を過剰発現させた2細胞期胚はその後の発生が停止することも分かった。Lamin B1の量的変化とそれに伴う核の物性変化が及ぼす発生生物学的機能を調べるためにlamin B1を過剰発現させた胚を使ってRNA-Seqを行った。その結果、lamin B1を過剰発現させた2細胞期胚は、未処理の胚に比べて胚発生に必要な遺伝子発現が大規模に抑制されていることが分かった。一方、核が硬くならないlamin B1変異体を過剰発現させた胚では、胚発生に必要な遺伝子発現が抑制されないことも分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度の目標であったマウス初期胚の2細胞期でいかにして核膜 Lamin が減少するのか、その分子メカニズムの同定が予定通り行うことができたため。また、次年度に予定していた初期胚の Lamin の量的変化が与える核の物性変化やLamin の量的変化と生理機能の関係の解析まで実験を進めることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度作成したlamin B1の変異体を使って、2細胞期でのlamin B1の減少がいかにして遺伝子発現を制御しているのか、その詳細な分子メカニズムを調べる。また、lamin B1過剰発現による核の硬化とは異なる方法で核の物性を人為的に変化させることでlamin B1の動態変化と核の物性変化のどちらが、もしくはその両方がいかに胚発生に関与しているのかについても調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画が順調に進んだことで当初の計画よりもその他の経費を節約することができたため。実験に必須な消耗品の購入に充てる。
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