研究課題/領域番号 |
23KJ2197
|
研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
上田 理誉 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 病院 てんかん診療部, 特別研究員(PD)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
|
キーワード | 視空間ワーキングメモリ― / 高ガンマ波活動 / 記憶負荷 / 下前頭回 |
研究実績の概要 |
10人の患者が研究に参加し、頭蓋内脳波を装着し、視空間ワーキングメモリ―課題を実施した。脳波の高ガンマ波を評価し、記憶負荷の増加、練習効果(試行数)の増大がもたらす神経ダイナミクスの変化を明らかにすることを目的とした。混合モデルを用いて、記憶負荷、練習効果を固定効果予測変数に加え、記憶負荷、練習効果に関連する高ガンマ活動の変化を検証した。さらに、記憶負荷、練習効果の増大に関連する神経伝導路の同定を行った。この結果、記憶負荷の増大に伴い、一次視覚野と内側側頭葉をつなぐoccipital longitudinal tracts(OLT)の連結性の増大を認めた一方で、arcuate、uncinate、superior-longitudinal fasciculi等の広範な神経伝導路の連結性の低下を認めた。さらに、練習効果に伴い、後部下前頭回の高ガンマ活動が増加し、前頭葉、頭頂葉、側頭葉を含むネットワーク全体の機能的結合が減少した。ロジスティック混合モデル解析の結果、早期の後部下前頭回の高ガンマ活性は、課題正解の予測因子と同定された。練習によって視空間ワーキングメモリーが最適化され、後部下前頭回の活性化とそれ以外の神経伝導路の連結性の減少がもたらされることが明らかとなった。 この研究結果の一部に関し、2022年12月の米国てんかん学会学術集会でポスター発表を行った。上記の網羅的結果をClinical Neurophysiologyに投稿し、2024年3月に受理された。今後は、時系列データの因果推論で用いられる統計手法のトランスファーエントロピーを用い、記憶負荷、練習効果の増大に伴う神経伝播の方向の同定を行うことで、ワーキングメモリ最適化の仕組みを明らかにしてゆきたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、私は、視覚ワーキングメモリ―の高ガンマ活動の時空間神経ダイナミクスの同定、同時に継続して活性化する2脳領域間の神経伝導路の同定とアニメーションの作成まで行った。この結果に関して、論文発表を行った。研究の進捗状況は当初の予定を超える早さであるが、リクルートできた患者数は10人に留まり、研究参加者の少なさが今後の懸念点である。
|
今後の研究の推進方策 |
現在、私は、ワーキングメモリ―の高ガンマ活動の時空間神経ダイナミクスの同定、同時に継続して活性化する2脳領域間の神経伝導路の同定とアニメーションの作成まで行うことができた。時系列データの因果推論で用いられる統計手法のトランスファーエントロピーを用い、記憶負荷、練習効果の増大に伴う神経活動の神経伝導路上の伝播方向の同定を行っていきたいと考えている。ワーキングメモリ―最適化の仕組みを明らかにしてゆきたい。さらにほかの種類の視覚ワーキングメモリ―課題実施下の高ガンマ波の神経ダイナミクスの同定にも取り組んでいきたいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
購入予定のWorkStationの価格が、Dell USA直販ストア割引となり、予定より安く買えたために、繰越金が生じた。現在、私は米国で研究活動をしており、ドル円為替レートが不安定で、近い将来であっても購入価格の予想が困難であり、このような購入額の変更は想定の範囲内と考えられる。
|