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2023 年度 実施状況報告書

動物の温度馴化を制御する神経回路の解析

研究課題

研究課題/領域番号 23KJ2236
研究機関大阪大学

研究代表者

岡畑 美咲  大阪大学, 生命機能研究科, 特別研究員(RPD)

研究期間 (年度) 2023-10-02 – 2027-03-31
キーワード温度馴化 / 多様性
研究実績の概要

温度は生体に直接影響を与える重要な環境情報である。本研究では動物の温度馴化を制御するメカニズムを解明するために、線虫C. elegans多型株を用いて温度馴化に関わる新規の遺伝子の同定を目指した。線虫C. elegansは単離された産地によって異なる温度馴化を示し(Okahata et al., JCPB, 2016)、この原因遺伝子多型としてVH遺伝子を同定した。VH遺伝子は酸素と二酸化炭素を受容する感覚ニューロンで発現していた。酸素受容ニューロンからの酸素情報が温度応答に影響を与えることを報告していたことから(Okahata et al., Science Advances, 2019)、この神経回路が温度馴化多様性に影響を与えている可能性が考えられた。そこで、酸素濃度を変化させた際の多型株の温度応答性を調べた。高い酸素濃度下では温度応答多様性が見られたが、低い酸素濃度下では温度応答多様性が見られなくなった。このことから、環境の酸素濃度が温度応答多様性を生み出すことが示唆された。
VH遺伝子は線虫特異的な機能未知の遺伝子であったため、VH遺伝子の機能解析をおこなった。VH遺伝子の発現時期を調べたところ、胚発生の時期に特異的に発現することがわかった。そこで、VH遺伝子が発現するニューロンの発生に関わる可能性を考え、VH変異体のニューロンを観察したところ、軸索の発生異常が見られた。これらのことから、VH遺伝子は胚発生の時期に神経発生を制御する遺伝子として機能することで温度応答性に影響を与えることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

温度馴化多様性を生み出す神経回路や分子メカニズムを明らかにすることを目的として、線虫C. elegansの温度馴化の違いを決定する原因遺伝子多型として同定していたVH遺伝子の解析を進めた。VH遺伝子は機能未知の遺伝子であったが、令和5年度の解析から、VH遺伝子は胚発生時期に特異的に発現し、ニューロン発生に関わる遺伝子であることが明らかになった。VH遺伝子が発現する酸素受容ニューロンの発生を制御することによって、下流に位置する温度受容ニューロンの温度応答性に影響を与えることが考えられた。VH遺伝子の機能が明らかになってきたことから、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

これまでの解析から、温度応答多様性を決定する原因遺伝子多型であるVH遺伝子は胚発生時期に発現し、神経発生を制御することがわかってきた。一方で、VH遺伝子が神経発生を制御する詳細なメカニズムはまだ明らかになっていない。そこで、令和6年度はRNAシーケンス解析により、野生株とVH変異体の胚発生時期に発現するRNA量を比較することで、VH遺伝子の下流で機能する遺伝子を調べる。
VH遺伝子は線虫特異的な遺伝子だと考えられていたが、一部の配列において高等動物にまで保存されていることがわかってきた。同様のメカニズムが他の動物にまで保存されているかを調べるために、最も脊椎動物に近い無脊椎動物として知られるカタユウレイボヤを用いる。まずはカタユウレイボヤが低温あるいは高温刺激に対して耐性をもつかを調べる。

次年度使用額が生じた理由

昨年度温度応答解析用の備品を購入する予定であったが、設置のためには電源工事が必要であることがわかった。予算の関係上、2024年度に電源工事を行うことになったため、次年度使用額が生じた。2024年度はこの経費を使用して、温度応答解析を行うための機器を購入し、実際に線虫やカタユウレイボヤを用いて温度応答の解析をおこなう予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2024

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] Screening for cold tolerance genes in C. elegans, whose expressions are affected by anticancer drugs camptothecin and leptomycin B2024

    • 著者名/発表者名
      Okahata Misaki、Sawada Natsumi、Nakao Kenji、Ohta Akane、Kuhara Atsushi
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 14 ページ: 1-14

    • DOI

      10.1038/s41598-024-55794-z

    • 査読あり / オープンアクセス

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公開日: 2024-12-25  

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