高い細胞増殖能を獲得したがん細胞は、細胞分裂期における染色体分配制御の破綻を特徴とする「染色体不安定性(Chromosomal Instability: CIN)」により、異数体となったさまざまな核型を持った細胞集団を形成する。しかし、「CINがいかにがん細胞の悪性化形質に関与するのか」未だによく分かっていない。 これまで、さまざまな核型をもった異数体細胞の集団であるがん幹細胞(Glioma Stem Cells; GSCs)を単クローン化して核型の違いで、GSCと同様な核型分布をしてしたGSC種似グループ、二倍体のグループ、多倍体のグループの3つのグループに分類した。これらのクローンを用いた予備実験で、「核型が異なるクローンは、CINの程度や細胞増殖速度が異なっている」ことを見出している。 本研究では、「細胞増殖性と関連する染色体構造変化を明らかにする」ことを目指し、2023年度には、がん幹細胞のクローンの特徴的な染色体構造変化を明らかにするため、Karyo-seq解析を実施した。その結果、複数の異数性が高いクローンで、染色体18番と19番が3本に増えている細胞の割合が優位に増加していることが分かり、これらの染色体がトリソミーになることが、異数体細胞の増殖を有利にしている可能性が示唆された。 次いで、核型の違いで誘導されるがん幹細胞のクロマチン高次構造変化を調べるため、Tn5トランスポゼーズのアクセス性を評価するATAC(Assay for Transposase-Accessible Chromatin)-seq実施した。また、各クローンのトランスクリプトーム解析を行い、ゲノム情報と合わせた、遺伝子発現プロファイル情報を解析している。
|