研究課題/領域番号 |
23KK0060
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
住 貴宏 大阪大学, 大学院理学研究科, 教授 (30432214)
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研究分担者 |
宮崎 翔太 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 宇宙航空プロジェクト研究員 (10975973)
越本 直季 大阪大学, 大学院理学研究科, 特任助教(常勤) (90829566)
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研究期間 (年度) |
2023-09-08 – 2027-03-31
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キーワード | 系外惑星 / マイクロレンズ / ブラックホール |
研究実績の概要 |
本研究は、我々Microlensing Observations in Astrophysics (MOA)グループがI.ニュージーランドMt.John天文台にある1.8m MOA-II望遠鏡を用いて、重力マイクロレンズ探査を3年間継続し、地球質量の系外惑星、浮遊惑星、及びブラックホールの探査を行う。また、II.隣接する61cm望遠鏡に近赤外線カメラを搭載し、我々が南アフリカに新たに建設した1.8m PRIME近赤外線望遠鏡が発見するイベントの追観測を行い、軽い惑星の感度を向上し、発見数を増やす。 2023年度は、ニュージーランドのMOA-II望遠鏡による観測は順調に継続した。 2023年度のデータの解析を行い、6個の系外惑星候補を発見した。マイクロレンズでは、ハビタブルゾーンよりやや外側の冷たい、地球質量までの軽い惑星に感度がある。これらの惑星は、惑星形成過程を理解する上で重要で、他の手法での観測と相補的である。今回の観測では、これらの惑星サンプルを増やす事ができた。これにより、岩石惑星を含む惑星の質量関数をより正確に見積もることができるようになる。また、研究分担者の越本は、ニュージーランドで行われた国際会議Extreme Solar Systems Vで、我々の浮遊惑星の質量関数に関する研究成果を発表した。また、彼は、ニュージーランドのMt.John天文台に行き、MOA-II望遠鏡の2024年度の観測に向けた準備を行なった。さらに、隣接する61cm望遠鏡への近赤外線カメラ設置に向けた調査を行なった。なお、近赤外線カメラは、共同研究者であるニュージーランド、オークランド大学のNicholas Rattenbury氏が予算を獲得し購入した。 ブラックホール探査に関しては観測は継続中で、これまで得られているデータの解析を進め、候補天体の発見を論文にまとめている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、ニュージーランドのMOA-II望遠鏡による観測は順調に継続した。 2023年度のデータの解析を行い、6個の系外惑星候補を発見した。これらの惑星は、惑星形成過程を理解する上で重要で、他の手法での観測と相補的である。今回の観測では、これらの惑星サンプルを増やす事ができた。また、研究分担者の越本は、ニュージーランドで行われた国際会議Extreme Solar Systems Vで、我々の浮遊惑星の質量関数に関する研究成果を発表した。これは、世界で初めて浮遊惑星の質量関数を求めた成果で、惑星形成過程解明に重要な成果である。この手法は、本計画期間内に発見される浮遊惑星の解析にも生かされる。また、彼は、ニュージーランドのMt.John天文台に行き、MOA-II望遠鏡の2024年度の観測に向けた準備を行なった。2023年度12月から、より安全な観測環境整備のため、カンタベリー大学と共同で望遠鏡及びその施設の安全衛生点検及びその対応作業を行なっており、一時的に観測を止めている。今回の訪問で、カンタベリー大学側と対応方法に関して打ち合わせを行い、その後現地調査及び対応準備をした。そのため、やや遅れはしたが、まもなく観測を再開する予定であり、計画全体への影響は最小限で済んだ。さらに、隣接する61cm望遠鏡への近赤外線カメラ設置に向けた調査を行なった。近赤外線カメラは、海外共同研究者であるニュージーランド、オークランド大学のNicholas Rattenbury氏が予算を獲得し購入することができた。 ブラックホール探査に関しては観測は継続中で、これまで得られているデータの解析を進め、候補天体の発見を論文にまとめている。この様に、一時観測を休止している期間はあるが概ね予定通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、ニュージランド(NZ)にある1.8m MOA-II望遠鏡の2.2平方度という広視野を利用して、銀河系バルジの50平方度内の星1億個を15-90分に1回と言う高頻度サーベイをする。銀河系バルジが観測可能な2月から11月に、日本のメンバーと現地観測員と手分けして1.8m望遠鏡で22領域(50平方度)を毎日観測する。7月頃は、この領域を1日10-50回も観測できる。2024年度は、望遠鏡および天文台の、ニュージーランド、カンタベリー大学の安全衛生基準遵守のための対応作業を行なっており、観測開始がやや遅れているが、5月中に観測を再会する予定である。この遅れによる計画全体への影響は最小限で済んだ。これによって、系外惑星を年間数個程度発見すると期待している。近赤外線カメラに関しては、海外共同研究者であるニュージーランド、オークランド大学のNicholas Rattenbury氏が予算を獲得し購入することができた。本年度は、購入したカメラに、筐体、フィルターシステム、望遠鏡へのマウント治具 等の制作を行い、望遠鏡への搭載を目指す。ブラックホール探査に関しては観測を継続する。さらに、これまで得られているデータの解析を進め、候補天体の発見を論文にまとめているので、これを完成させる。さらに新たな候補の探索も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度は、MOA-II望遠鏡の隣にあるB&C61cm望遠鏡に搭載する赤外線カメラを制作する予定であった。しかし、海外共同研究者である、ニュージーランド、オークランド大学のRattembury氏が、赤外線カメラの検出機を購入する予算の獲得に成功したことで、我々が購入する必要がなくった。また、フィルターシステム、カメラ筐体および望遠鏡とのインターフェースを制作する予定であったが、これらもRattembury氏が制作することになったので、我々が制作する必要がなくなった。このため、今年度、検出機購入およびカメラ制作のために確保してあった予算を来年度以降の観測のための費用に充てる予定である。
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