研究課題/領域番号 |
23KK0090
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
青木 伸之 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (60312930)
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研究分担者 |
音 賢一 千葉大学, 大学院理学研究院, 教授 (30263198)
柯 夢南 千葉大学, 大学院工学研究院, 助教 (40849402)
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研究期間 (年度) |
2023-09-08 – 2027-03-31
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キーワード | ナノ秒パルス伝導 / 遷移金属ダイカルコゲナイド / バレーホール効果 / トランスファー技術 / ファンデルワールス積層 / トンネル型電界効果トランジスタ |
研究実績の概要 |
本研究はナノ秒パルス解析によって,遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDC)を中心とした2次元半導体物質を用いた次世代デバイスにおける非平衡キャリア伝導ダイナミクスを明らかにする。これまで研究代表者らが確立してきた,高度なファンデルワールス積層化技術によってもたらされる高精細ヘテロ接合系による電界効果トランジスタ(FET)構造を基にした新奇電子デバイスに対し,バッファロー大のバード教授が有するナノ秒パルス解析法を適用する。次世代の半導体デバイス,とくに原子層特有のバレーホール効果におけるバレー流の伝搬や,トンネル型FET,2次元半導体界面におけるトラップ現象などに対する時間分解解析は十分に行われておらず,非平衡状態におけるキャリア伝導とフォノン系へのエネルギー散逸のダイナミクスはいまだ明らかになっていない。千葉大グループとバッファロー大グループそれぞれが確立してきた技術を結集し,千葉大グループにおけるパルス伝導測定系の構築も含め,非平衡キャリア伝導ダイナミクス研究拠点形成を目指した国際共同研究を展開する。 そのため,2023年12月に共同研究者であるバッファロー大のバード教授を千葉大に招聘し,最近の研究内容の進展を紹介し,互い研究グループの有する技術と実験装置の確認を行うとともに,今後の交流計画,試料構造の確認等の打ち合わせを行った。また,バード教授と共同で研究を進めているアリゾナ州立大のD.K.フェリー教授の研究室に1週間訪問し,バレー流の量子化現象の可能性と,従来の量子伝導現象との違いについて議論を行った。さらに,今後パルス伝導実験の対象として計画しているTMDCで構成したトンネル型FETに関する研究成果が,Appl. Phys. Lett.に掲載が決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である2023年度はナノ秒パルス解析研究に関する準備を行った。バッファロー大のバード教授を千葉大に招聘し,今後の共同研究の推進について打ち合わせを行った。とくに,現在行っている研究テーマとその現状について互いに発表を行うことで,確認を行った。この間,これまで進めてきた共同研究の成果に関して論文にして出版するための議論を行うことができた。また,次年度に予定しているバッファロー大での共同実験に関する打ち合わせを行い,7月の後半から9月の前半に掛けてバッファローに滞在してパルス伝導実験に関するトレーニングを受けるための計画の検討を行った。 研究内容の進捗としては,今後パルス伝導実験を行う対象である,2次元物質の一種である単層MoS2におけるバレーホール効果の研究を進めた。とくに今年度はバレーホール効果に対してスプリットゲート構造を導入することで,バレー流の階段状の変化の観測に成功したことから,その特性の解析を進めてきた。バード教授の共通の共同研究者であるアリゾナ州立大のD.K.フェリー教授の研究室に1週間訪問し,バレー流の量子化現象の可能性と,従来の量子伝導現象との違いについて議論を行った。こらの議論をもとに,2024年度には国際共著論文の執筆を計画している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究はナノ秒パルス解析によって,遷移金属ダイカルコゲナイドを中心とした2次元半導体物質を用いた次世代デバイスにおける非平衡キャリア伝導ダイナミクスを明らかにすることを目的とする。2年目となる2024年度の計画としては,7月から9月にかけ,研究協力者の大学院生らと共にバッファロー大に滞在し,パルス伝導実験に参加することを計画している。現地での実験に参加し,パルス伝導実験のために必要なインピーダンスマッチングを考慮した試料構造および試料のマウント方法,さらに測定装置の扱い方などについて学ぶことになっている。これらの技術を千葉大に持ち帰り,パルス伝導実験ができる環境を整えていく。また,今後遷移金属ダイカルコゲナイドの一種であるMoTe2で構成されたトンネル型FETもパルス伝導実験での対象として考えている。また,7月末にはカナダのオタワで開催される半導体物理に関する国際会議(ICPS2024)に参加し,バレーホール効果の量子化現象の成果について発表を行うと共に,国際論文誌への投稿をめざす。
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次年度使用額が生じた理由 |
74,927円が次年度へ持ち越しとなったが,これはアリゾナ州立大への出張の際の航空券代が,想定していた額よりも安くなったためであり,次年度の旅費と合算して使用する予定でいる。
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