研究課題/領域番号 |
23KK0092
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
金井 駿 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (40734546)
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研究分担者 |
土肥 昂尭 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (20972376)
石原 淳 東北大学, 工学研究科, 特任助教 (50801156)
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研究期間 (年度) |
2023-09-08 – 2027-03-31
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キーワード | スピントロニクス / スピン軌道相互作用 / スピンホールナノオシレーター / 量子ビット |
研究実績の概要 |
研究代表者はこれまでの相手方との共同研究で、磁性体薄膜の成膜を担い、共同研究先で加工したSHNOアレイ素子を用いて、単一SHNO素子の電界による低消費電力制御を達成し[H. Fulara, S. Kanai, J. Akerman, Nat. Commun. 11, 4006 (2020).]、更に4列のSHNO列素子の共振モードの電界制御と、SHNOを利用した脳型計算の原理を実証した。[M. Zehedinejad, S. Kanai, J. Akerman, Nat. Mater. 21, 81 (2022).]。日本側グループ研究者がヨーテボリ大学に渡航してSHNOアレイ素子に加工し、これらの実績と同様の素子加工作製ノウハウを取得する。 初年度である今年度は、まず日本側メンバーによるSHNO素子作製技術の確立を行った。ヨーテボリ大学の相手側研究室に実際に渡航し、現地の素子作製方法、素子測定手法について日本側に導入する用意を行った。また、実際に相手側の研究者を日本側に招き、研究指導を通してノウハウを導入した。 本知見などに基づき、単一のSHNO素子を作製した。日本側で成膜、加工、測定までのすべての工程を行い、ギャップ100nm-200nmの単一SHNO素子における、明瞭なスピントルク発振を観測した。更に、発振スペクトルの3次元磁場依存性を明らかにした。外部のスピン系の励起に必要なSHNO発振角度を見積もり、今後の性能向上に必要となる指標を定量的に明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
単一素子の作製技術は、2023年度~2024年度にかけて取得することを計画していたが、2023年度の半年間で計画を終了した。2023年度以降、前倒しでアレイ化素子の作製を遂行する。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、(1)SHNO素子のアレイ化による狭線幅・高出力化(渡航研究)及び(2)日本側設備でのSHNOアレイ素子の作製方法の確立に取り組む。 (1)2024年4月時点ですでに渡航研究を開始しており、2023年度の研究を発展させ、ヨーテボリ大学にてSHNOアレイ素子のQ値・出力強度のアレイジオメトリ依存性を明らかにし、狭線幅・高出力化を図る。デバイスジオメトリ(狭窄部幅、狭窄部の配置間隔、アレイの角度等)が出力(線幅、発振パワー、閾値電流)を決定する機構は必ずしも明らかではないため、これらを実験・理論両面から明らかにする。 (2)日本側研究機関にてSHNOアレイ素子の作製方法を確立する。代表者は東北大学電気通信研究所附属ナノ・スピン実験施設において、電子線描画装置(最大加速電圧100 kV, 最小ビーム径4 nm, 重ね合わせ制度25 nm)他のリソグラフィ設備群を管理しており、日常的にアクセスすることが可能である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が予想外に早く進展したため、2025年度から本格的に開始する予定であった、課題D:「固体中スピン量子ビットのSHNOアレイ素子による制御」に必要な光学測定系の構築を前倒しで行ったためである。来年度以降、2023年度すでに導入した設備を活用して前倒しで研究を遂行する。
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