研究課題/領域番号 |
23KK0109
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
佐藤 英世 新潟大学, 医歯学系, 教授 (60235380)
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研究分担者 |
小林 翔 山形大学, 農学部, 准教授 (10779490)
叶 奈緒美 山形大学, 農学部, 准教授 (30780267)
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研究期間 (年度) |
2023-09-08 – 2027-03-31
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キーワード | シスチン / フェロトーシス / フラボノイド / グルタチオン / xCT / グルタミン酸 |
研究実績の概要 |
シスチン・グルタミン酸輸送系(xc-系)は、哺乳類細胞膜上に発現するアミノ酸輸送系の1つであり、内在性抗酸化物質であるグルタチオン量の制御に重要な役割を担っている。申請者らが世界で初めて遺伝子クローニングに成功したこの輸送系の本体タンパク質であるxCTは、近年、がん等の病態に深く関わることが明らかになってきた。申請者らは、食品由来成分によるxCT遺伝子の発現制御機構を調べ、ある種のフラボノイドによって、xCTが誘導されることを見い出した。最近、フェロトーシスと命名された鉄依存性の新しい細胞死の形態が報告され、神経変性疾患や急性臓器障害、がんなど多様な疾患への関与が示されている。また、xCTがフェロトーシス制御の最上位に位置する分子であることが明らかになった。本研究では、xCTの発現制御に影響を与える未知の食品成分の探索を行い、フラボノイドを含めた食品由来成分によるxCTの発現制御のメカニズムを明らかにし、xCTを介したフェロトーシス制御機構を解明することを目指した。初年度は、構造が類似する12種類のフラボノイドについて、フェロトーシス抑制能を調べたところ6種類のフラボノイドに明らかなフェロトーシス抑制効果のあることが示された。これらのフラボノイドは、xCTの阻害剤とGPX4の阻害剤、いずれのフェロトーシス誘導剤についても同様な抑制効果を示した。これらのフラボノイドの中でラムネチンの抑制効果が一番高かった。一方、細胞内グルタチオンとの関連性を調べたところ、フェロトーシス抑制能とグルタチオンの動態とには、明確な関連性は、認められなかった。酸素分圧の影響についての解析も開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者は、予定通り2024年2月にConrad博士の研究室に赴き、今後の研究の進め方について打合せを行い、また、有用な情報交換を行った。また、フラボノイドのフェロトーシス抑制効果が、細胞種によって異なるかどうか、また、酸素分圧の影響はどうかについて研究に着手し、in vitroでの虚血再灌流モデルも構築した。今後、このモデル系を用いて、種々の解析を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、フラボノイドによるフェロトーシス抑制効果のメカニズムを解明するとともに細胞種による効果の違いを明らかにする。また、酸素分圧の変化がフェロトーシスにおいてどのような影響を及ぼすか明らかにする。xCT遺伝子改変マウス作製のためのストラテジーを決め、作製準備を開始する。2名の研究分担者については、引き続きxCTの発現を制御する食品由来成分のスクリーニングを進めてもらう。また、Conrad博士の研究室に派遣して、さらなる研究の加速化を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費および物品の購入が年度末にかかり、残金で購入できる適当な物品が見当たらなかったことから、2023年度に少額の助成金が残った。この分は、2024年度の助成金に組み込み、消耗品代として使用する。
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