研究課題/領域番号 |
23KK0113
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
安井 康夫 京都大学, 農学研究科, 助教 (70293917)
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研究分担者 |
藤田 泰成 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 生物資源・利用領域, プロジェクトリーダー (00446395)
桂 圭佑 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (20432338)
西村 和紗 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 助教 (60835453)
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研究期間 (年度) |
2023-09-08 – 2026-03-31
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キーワード | キヌア / 孤児作物 / 栽培化 / 多様性 |
研究実績の概要 |
研究代表者の安井(京都大学農学研究科)がボリビア国サンアンドレス大学に赴き、栽培キヌア (Chenopodium quinoa ssp. quinoa) およびその野生種であるアハラ(C. quinoa ssp. melanospermum)のDNA抽出、連鎖解析のためのゲノムワイド遺伝子型決定(dpMig-seq)、およびNGSライブラリ構築が可能な実験環境を同大学において整えた。この際、カウンターパートであるサンアンドレス大学のJorge Quezada博士との連携を強化し、上記技術をサンアンドレス大学に移転した。今後の国際的なキヌア研究機関の設立の礎を築くことができたと考えている。 その後、ボリビアにおいて104個体の栽培キヌアおよびアハラからDNAを抽出し、Illumina DNA Prepキットを用いてNGSライブラリを作成した。これらNGSライブラリーはアメリカの塩基配列決定委託会社に送付済みであり、全個体のライブラリが品質検査を通過したとの報告を受けた。現在、ゲノム配列データの納入を待っている。 また、ボリビアにおいて栽培キヌア(Maniquena)と2系統のアハラ(Aj037およびAj113)のF1および、その後代となるF2集団を育成した。第1集団(Maniquena x Aj037)は186個体、および第2集団(Maniquena x Aj113)は193個体から成り、F2での連鎖解析を可能とした。親系統であるAj037およびAj113の花柄を観察したところ、顕著な離層を確認することができたため、アハラが有する脱粒性には花柄での離層形成が重要な役割を果たしていると考えられた。また、これら個体からdpMig-seqを用いた遺伝子型決定を実施するため、クルードDNAを抽出し、dpMig-seq解析用ライブラリを構築した。本ライブラリーは2024年度の早期にアメリカの塩基配列決定委託会社に送付予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では1)栽培キヌアおよびアハラの多様性評価およびゲノム集団遺伝学的解析による、キヌアゲノム上の人為選抜領域の同定、2)交配実験による脱粒性などの栽培化関連遺伝子の同定を目的としている。 1)においては、すでにNGSライブラリを米国の塩基配列決定委託会社に送付しており、順調に作業が進んでいる。 2)においては、2つの交配集団を順調に育成している。(ただし、予定していたF5世代の集団では、脱粒性の表現型が明瞭でなかったため、新規に交配集団を作成した。) またこれら研究を通して、ボリビア国内へのゲノム育種研究に関する技術移転も良好であり、今後の国際拠点形成を進めることができた。このため、本研究は順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に得られるNGSデータを構築済みの栽培キヌアのリファレンスゲノムにマッピングしてSNPsを検出する。その後にゲノム集団遺伝学的解析を実施することにより、南部高地型キヌアでのみ変異量が減少するゲノム領域、すなわち人為選抜領域が明らかとなる。現在のところ、アハラのゲノムリファレンス配列が存在しない。そこで本研究では、これを整備すると共に、マッピングのリファレンスとして利用し、上記結果を確認する。栽培化関連遺伝子同定については、F2集団を用いて、dpMig-seqによる遺伝子型決定を実施する。また栽培化に最も重要と考えられる脱粒性、および種子の大きさや色について調査し、連鎖地図を作成する。この際、上記のアハラの染色体レベルでのリファレンス配列を利用する。なお、これら作業は本年度4月から6月にボリビアで実施する予定である。また、同国へ分担者の西村、桂を派遣することにより、国際拠点形成を推し進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の安井の2023年度支出には、米国にDNAを送付ずみのNGS解析の支出が反映されていない。また、アハラの2系統でリファレンス作成のための染色体レベルでのゲノム解読を実施する予定である。これらの支出のため、2024年度の早い段階で繰り越し分を使用する計画である。研究分担者の藤田および西村は2023年度予算をほぼ消化しており、今後に日本国内で本研究に必要なPCRなどの分子生物学に関する試薬に使用する。分担者の桂はボリビアへの渡航を予定していたが、他大学への異動があり、断念せざるを得なかった。2024度にはボリビアへの渡航を予定しており、繰越金を支出する計画である。
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