研究課題/領域番号 |
23KK0119
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
石田 厚 京都大学, 生態学研究センター, 教授 (60343787)
|
研究分担者 |
前田 高尚 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (10357981)
吉村 謙一 山形大学, 農学部, 准教授 (20640717)
才木 真太朗 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 研究員 (30824114)
安立 美奈子 東邦大学, 理学部, 准教授 (40450275)
|
研究期間 (年度) |
2023-09-08 – 2027-03-31
|
キーワード | 熱帯季節林 / 常緑樹林 / 乾季落葉樹林 / モンスーン / フェノロジー / 幹肥大成長 / 呼吸 / 光合成 |
研究実績の概要 |
タイ・サケラート環境研究所の常緑林と乾季落葉樹林にて、これらそれぞれの森林タイプでの林冠優占木であるHopea fereaとShorea siamensisについて、それぞれ2本づつの調査木を選定した。Hopea fereaの1本を除いた3本については、既存のタワーを使って林冠葉に達することができる。これら4本の調査木について、胸高の高さの幹部にロガー付きの精密デンドロメータを設置した。既存のタワーは、今までのプロジェクトで野外設置してきた物である。またShorea siamensisの2本について、幹基部と枝部での肥大成長の季節性のずれを見るため、林冠近くの直径3-4cmの枝について、ロガー付きの精密デンドロメータを設置した。これらデンドロメータの設置は、肥大成長を始めるであろう雨季前の乾季期間に完了した。また同時期に、Hopea fereaとShorea siamensisの調査木の林冠部シュートについて、枝の伸長や葉のターンオーバー(フェノロジー)を測定できるように枝にマーキングを行った。また現在、フェノロジーを継続して数値化して自動測定できるような工夫をするため、カメラシステムの構築を行なっている。これは、タイに行った時にしかフェノロジー測定ができないため、新葉の展開や落葉データを補完して、より詳細なフェノロジーデータを得るためである。さらに気温や光、土壌水分などの微気象を引き続き継続測定できるよう機器のメンテナンスも行った。現在、次回のタイ渡航を5月中旬に計画をしており、タイ側の研究者と予定調整をしている。また今までのタイ樹木の生理データを整理、世界中のみなが使えるようなデータベース化し、国際誌に論文として掲載された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プロジェクトの開始が秋からであり、分担者の1名がコロナ感染でタイに行けなくなるなどの事態があったが、タイでの測定や野外での機器の設置など順調に進んでいる。これらの野外に設置した機材として、幹部や枝部の肥大成長を測定するデンドロメータや、気温、光、土壌水分、雨量などの微気象観測機器を設置してきた。またこの間、今までの科研費を使用して得てきた、タイ樹木の葉の生理データを網羅的に整理し、世界中のみなが使えるようにデータベース化し、国際誌であるScientific Dataに論文として掲載された。Scientific Dataは10近くの高いインパクトファクターを持ち、世界的に認知度の高い雑誌である。他にもタイの樹木データで国際誌であるTreesへの掲載や、それを元にし和文誌での研究成果の公表も行なってきており、順調に進展していると評価できる。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は、季節を通じて定期的にタイに渡航し、枝の伸長や葉のターンオーバー、樹木の光合成や呼吸の測定を行っていく。またカメラシステムの野外設置により、葉のフェノロジー(出葉や落葉)を数値化して自動計測し、これら日ごとのデータと、タイに渡航した時に直接測定したフェノロジーデータとの整合性を検証していく。また次回のタイ渡航を5月中旬に計画をしており、タイ側の研究者と予定調整をしている。これは乾季に設置したデンドロメータの作動チェックや野外設置機器のメンテナンスのため、雨季が始まって早々に行う必要がある。
|
次年度使用額が生じた理由 |
分担者4名のうち1名は、コロナ感染のためタイへの渡航ができなくなり、またその後遺症や学事の立て込み等でこの半年間十分な研究ができなかった。そのため、対象分担者から全額の繰り越しが生じた。また分担者のうち2名において、消耗品の購入に際し残額の端数が生じたため、無理に予算を執行することなく、次年度への経費として回した。円安や飛行機代のサーチャージの高騰などにより、タイへの渡航出張にかかる費用が当初計画よりも高くなっているのが現状であり、2024年度もそれは変わらない状況が続くと予測される。そのため、今年度の残額は次年度に使用していく予算としていくのが、予算執行上、最も合理的であると判断した。
|