研究課題/領域番号 |
23KK0126
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松脇 貴志 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (20447361)
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研究分担者 |
渡辺 雄貴 日本獣医生命科学大学, 応用生命科学部, 助教 (50781788)
中村 吉伸 高崎健康福祉大学, 薬学部, 助教 (60880317)
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研究期間 (年度) |
2023-09-08 – 2027-03-31
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キーワード | 体温調整 / 延髄 |
研究実績の概要 |
哺乳類の体温は生体の恒常性にとって重要な因子の一つであり、中枢神経系によって一定範囲の温度に保たれている。体温上昇を制御する発熱中枢として視床下部視索前野が古くから知られているが、体温低下の機構は依然として不明な点が多い。我々はこれまでの共同研究の結果から、末梢組織から中枢神経系に感染性の刺激を仲介する経路の一部として知られる延髄橋結合の腕傍核(PBN)によって感染時の体温の上昇/低下の弁別が行われていると仮定して、その機構の解明を目指して本研究に着手した。 2023年度は日本国内の共同研究者ら2名と研究打ち合わせを行った後に連携機関であるスウェーデンLinkoping大学に赴き、共同研究者であるBlomqvist博士との研究打ち合わせ、実験スペースと使用機器の確保、利用する動物施設の確認と利用登録を行った。 実験としては、高い再現性をもって低体温症を引き起こすことができるアセトアミノフェン誘導性体温低下モデルを確立した。また、その際にPBNが強いcFos免疫陽性を呈する、すなわち神経興奮性が高まることを確認した。さらにこの条件で強度の体温低下が引き起こされている個体の脳を採取してスライス状に処理したのちPBNをパンチアウトし、同部位での遺伝子発現状態について、RNA-seqにて対照群であるSaline投与個体との比較を行った。RNA-seqの結果得られたデータは、現在詳細に解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海外連携先の共同研究者であるBlomqvist博士とはメールやオンライン会議で密に打ち合わせを重ねており、代表研究者である松脇および日本側の共同研究者のいずれも、先方を訪問し次第動物実験を含めた諸々の実験を速やかに開始できる環境にある。
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今後の研究の推進方策 |
1. RNA-Seqで得られたデータを詳細に解析し、感染性体温低下時にPBNで働く因子を同定する。 2. 同定された因子とcFosとの二重免疫染色を行い、体温低下時に興奮する神経細胞の特性を明らかにする。 3. オプトジェネティクスによって2の細胞群を活性化し、体温低下の再現を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
アセトアミノフェン投与による低体温条件下でのPBN採取については、計画当初は日本で松脇が行う予定だった。しかし研究打ち合わせの結果、すでに当該実験条件を確立したBlomqvistグループで採材まで行う方が効率的であると判断し、先方で採取したサンプルをこちらに輸送することとした。そのため、同実験のために確保していた費用が使用されず、2024年度に繰り越された。 繰り越された予算は2024年度予算と合わせて、体温測定用照れメーターの補充購入に充てる予定である。Blomqvist班でも同様のテレメトリーシステムを利用しており、スウェーデンで実験する際にあちらに持参して使用することも可能である。
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