研究課題
熱帯熱マラリア原虫が感染した赤血球は、胎盤の表面に接着して「妊娠マラリア」という状態を引き起こし、これは母体と胎児に致死的な影響を与える。しかしそのメカニズムは、一種類の原虫リガンドタンパク質が胎盤への接着に関与していることが知られているのみで、全体像はほとんど判っていない。そこで本研究では、胎盤に接着しているマラリア原虫から、接着に使われるマラリア原虫のタンパク質を原虫のゲノム網羅的に全て見つける。本研究によって、現在最も遅れている妊婦と胎児に対するマラリア対策を加速することができる。マラリア感染赤血球が胎盤表面に接着し増殖する「妊娠マラリア」は、母体と胎児に致死的な影響を与える。感染赤血球表面のVSA2CSAが胎盤表面のコンドロイチン硫酸A(CSA)と結合するためと考えられているが、CSAは体内の様々な組織にも存在するため、胎盤を認識する他の原虫リガンドの存在が示唆されている。しかし赤血球表面原虫抗原は反復配列と多型に富み、質量分析では同定できないため、リガンドの同定は容易ではない。そこで本研究は、胎盤に接着する感染赤血球を精製し、RNAseqで原虫リガンド候補分子を絞り込む。さらに妊娠マラリアに防御免疫がある経産婦由来抗体が認識する原虫抗原を、コムギ無細胞系で調製した原虫タンパク質アレイで同定し、胎盤接着原虫リガンドを網羅的に明らかにすることを目的とする。R5年度は、ケニア西部のマウントケニア大学フィールド研究施設で実施されている妊婦コホートにおいて本研究を実施するため、日本側研究チームとマウントケニア大学チームと研究打合せを行い必要物品リストの作成などの研究の準備を開始した。
2: おおむね順調に進展している
ケニア西部のマウントケニア大学フィールド研究施設で実施されている妊婦コホートにおいて本研究を実施するため、日本側研究チームとマウントケニア大学チームとリモートで研究打合せを行い必要物品リストの作成などの研究の準備を開始した。
R6年5月に、研究代表者、研究分担者全員及び博士課程大学院生とともに、ケニア西部のマウントケニア大学フィールド研究ステーションで実施されている妊婦コホートを訪問し、本研究を実施するための日本側研究チームとマウントケニア大学チームと研究打合せを現場で行いフィールド研究を開始する。また、本研究のもう一つの重要な目的である、様々なマラリア臨床研究を遂行可能な日本・ケニア間の国際共同研究基盤を新たに確立するために、マウントケニア大学共同研究チームの大学院生並びに若手研究者を対象に、ワークショップを開催する。これにより、本研究プロジェクトに留まらない双方の研究の持続的な発展が期待できる。
R6年度初頭に、ケニア西部のマウントケニア大学フィールド研究ステーションで実施されている妊婦コホートにおいてフィールド研究を開始するために、R5年度は研究計画の詳細をケニア側の共同研究者と何度もリモートで打合せを実施する必要があった。そのため、R5年度に予定していた物品購入の準備が遅れ、それらの購入を次年度に繰り越す必要があった。R6年度には繰越額も含めて計画通り予算を執行する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
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