研究課題/領域番号 |
23KK0156
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
香取 幸夫 東北大学, 医学系研究科, 教授 (20261620)
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研究分担者 |
清水 佑一 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (10985237)
本藏 陽平 東北大学, 大学病院, 講師 (20810146)
逸見 朋隆 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (30985239)
鈴木 淳 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (80735895)
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研究期間 (年度) |
2023-09-08 – 2028-03-31
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キーワード | 加齢性難聴 / 騒音性難聴 / 性差 / 酸化ストレス / 遺伝子多型 |
研究実績の概要 |
本年度は性差に伴う聴力障害(加齢性難聴および騒音性難聴)のメカニズムの解明、ならびにそれに関与する遺伝子多型を明らかにすることを木庭に、米国フロリダ大学老化研究所に研究分担者(若手研究者)の清水佑一氏の長期派遣を開始し、共同研究を開始した。 令和5年12月に染谷博士が東北大学を訪問し具体的な研究計画を研究代表者の香取ならびに分担者の鈴木、本藏、清水と構築したことに引き続き、令和6年2月(一時)ならびに3月よりフロリダ大学の研究室において、派遣した清水氏が共同研究先の染谷慎一博士とともに卵巣摘出や性ホルモンの補充等で性差に介入したマウスモデルを聴覚研究を進めるための環境を整備した。具体的には性差に介入した加齢モデルマウスの飼育と聴力検査(ABR:聴性脳幹反応)の実施、内耳標本採取と組織切片の作成の準備を行った。 加齢による聴力変化と内耳組織の形態および酸化ストレスに関与する分子生物学的解析を進めている。加齢性難聴に対するエストロゲンの影響を明らかにするとともに、酸化ストレスに対する応答の制御に関わる転写因子Nrf2の遺伝子改変マウスを用いて、酸化ストレスへの応答の差が性差により影響をうけるかどうかを同時に検討している。 一方、日本側では東北メディカルメガバンクが大規模コホート研究で収集・保有している約2万件の聴力検査結果を含む大規模データの解析を研究倫理審査を経て開始し、難聴に交絡する生活因子や家族歴について調査を始めるとともに、遺伝子多型の検索を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和5年10月に本研究課題の採択が決定し、直ちに国際共同研究先のフロリダ大学に派遣する若手研究者(清水佑一氏)を決めましたが、滞在Visaおよびフロリダ大学内での就労許可に関する手続きに時間を要し、認可が令和6年2月に至ったため、実際の動物実験の開始が遅れている。 短期的な渡航やWebによる面談を通して、研究環境の設定については早期より取り掛かったが、渡米した清水氏による具体的な実験の開始は想定よりも2か月程度遅れている。 一方で東北メディカルメガバンクが大規模コホート研究で収集・保有しているデータを用いた、難聴と関連する因子に関する検索はおおむね予定通りに開始・進行している。 しかしながら、現在までに本課題研究に関する学会報告や論文の公表はない。
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今後の研究の推進方策 |
フロリダ大学に派遣している清水氏ならびにその後継の若手研究者が、性差に伴う聴力障害の差異のメカニズムの解明を続ける。性ホルモンの減少や投与、卵巣摘出等が加齢性難聴や音響性難聴に与える影響について検討する。 それと同時に日本側では東北メディカルメガバンクが大規模コホート研究で収集・保有している年齢などの基本データ、血液検査結果、聴力検査結果、全ゲノム情報を活用して、難聴の有無で明らかに差を有する遺伝子多型を同定する。生殖可能期間や出生数と難聴との関係、女性ホルモンやその受容体の遺伝子多型と難聴との関係、男女別の正常―異常群間の遺伝子発現解析を勧める。数千人規模の血漿メタボローム解析データを用い、男女間および正常群と難聴群間に約500種類におよぶ代謝産物の比較を行う。変化のある代謝産物と関連する遺伝要因を、metabolome genome-wide association studyの結果を利用して同定する。 この固定された候補遺伝子の情報をフロリダ大学と共有し、有望な遺伝子に関してCRISPR-Cas9システムを用いて遺伝子改変マウスを作成し、聴力の変化、内耳形態、性ホルモンを含む血液生化学データを解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度(令和5年度)に共同研究先のフロリダ大学で実施する予定であった動物実験の大部分の開始が。派遣する研究分担者(若手研究者)のVISA取得時期の関係で大きく遅れた。そのため遅れて未実施の研究も次年度(令和6年度)に当初の2年目の予定に加えて行わなくてはならす、次年度使用額が生じた。この遅れている部分の研究について、さらにフロリダ大学の研究室に派遣する若手研究者を1名増加(短期間)して、次年度終了時に当初の計画に追いつくように進める。次年度使用額はそのために増加する消耗品費用と渡航費用に用いる。
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備考 |
現在、清水佑一氏(研究分担者、若手研究者)を派遣している学部と、共同研究を行っている染谷慎一博士のアドレスを記入しました。
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