研究課題
人間を特徴づける認知機能とその発達的な変化の特性を知るうえで、それらが「どのように進化してきたか」という理解が必要不可欠である。本研究は、①人間にとって最も近縁なチンパンジー属2種(チンパンジーとボノボ)を研究対象に、②野外研究と実験研究を組み合わせ、③認知機能の生涯発達と世代を超えた知識や技術の伝播に焦点をあてることで、人間の認知機能の特徴を明らかにすることを目的としている。平成22-24年度の最先端研究基盤支援事業等によって、京大の霊長類研究所と熊本サンクチュアリに整備された比較認知科学実験施設の稼動を進める。日本には皆無だったボノボ(チンパンジーの同属別種)4個体を平成25年11月に北米から導入した。世界に類例のない新たな試みとして、チンパンジーとボノボの双方を対象に、認知発達と世代を超えた知の伝承について実証的な研究をおこなう。本研究の背景に、チンパンジーについて過去45年間をかけて群れ作りしてきた霊長類研究所と、新設の熊本サンクチュアリと、37年間にわたって継続観察してきた西アフリカのギニアのボッソウの群れがある。祖父母―父母―子どもという3世代を対象に、認知機能の生涯発達と世代を超えた知の伝承の霊長類的基盤について研究する。チンパンジーの野外研究はギニアのボッソウの12個体、実験研究は霊長類研究所の14個体と熊本サンクチュアリの61個体が主な対象だ。ボノボの野外研究はコンゴの27個体、実験研究としては熊本サンクチュアリに北米から導入した4個体が対象になる。チンパンジー属2種に人間を加えた「ヒト科3種」の比較研究を推進している。野生チンパンジーと野生ボノボの長期継続野外研究は、ケンブリッジ大学等との国際連携でおこなった。飼育下のチンパンジーでは、アイたち第1世代から見ると孫にあたる第3世代を作って、知性の生涯発達と世代を超えた知識や技術の伝播を研究するために必要な交配の準備をおこなった。
2: おおむね順調に進展している
霊長類研究所のチンパンジーにおいて第3世代の繁殖準備のため、複数の繁殖予定個体への避妊薬投与を打ち切り群れの再構成等の努力をおこなったが、当該年度中には実際の繁殖には至らなかった。予算の一部を次年度に繰り越して、繁殖の努力を継続することとした。それ以外では、研究が順調に進展している。チンパンジーやその他の種で、野外研究および実験研究の成果を様々な形で公表している。
チンパンジーの第3世代の繁殖のための努力を継続する。平成25年11月に熊本サンクチュアリに導入されたボノボ4個体に加え、新たな個体を北米から導入する準備を進めており、ボノボの実験研究を本格的に推進できることが期待できる。ヒト科3種を主な対象とした比較研究を、野外研究と実験研究を大きな柱として進めていく。
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