研究課題/領域番号 |
24000002
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
小林 良彰 慶應義塾大学, 法学部, 教授 (40153655)
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研究分担者 |
平野 浩 学習院大学, 法学部, 教授 (90222249)
山田 真裕 関西学院大学, 法学部・教授, 教授 (40260468)
谷口 将紀 東京大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (60251435)
名取 良太 関西大学, 総合情報学部, 教授 (60330172)
飯田 建 同志社大学, 法学部, 准教授 (50468873)
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研究期間 (年度) |
2012-05-29 – 2017-03-31
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キーワード | 政治学 / 政治意識 / 市民社会 / 選挙公約 / 内容分析 / 民主主義 / 日本 : 韓国 : 台湾 / データベース |
研究実績の概要 |
平成26年度は次の研究を実施した。(1)当初、予定されていなかった急な衆議院の解散総選挙が行われたことに迅速に対応して、衆院選の事前パネル調査(平成26年12月4日-12月8日、有効回収サンプル4, 116)ならびに事後パネル調査(平成26年12月18日-12月23日、有効回収サンプル2, 786)を実施した。さらに、衆院選に立候補した全候補者(小選挙区選挙)の選挙公約を収集するとともに内容分析を行ってコーディングを実施し、代議制民主主義の事前的側面の分析を行った。また、国会議事録の内容分析を平成26年衆院選前まで行い、代議制民主主義の代議的側面の分析を行った。(2)代議制民主主義の分析対象を当初の申請内容の国政レベルだけでなく、自治体レベルにも拡大し、抽出した3道県を対象とする市民意識調査(平成26年8月21日-25日)を実施するとともに、自治体政策担当者に対するヒアリングを実施し、自治体レベルにおける代議制民主主義の分析を行った。さらに(3)日本と同じ選挙制度を共有する韓国・台湾における主要な研究機関との共同研究を推進するために、台湾国立政治大学選挙研究センターと協定を締結し、代議制民主主義の分析対象を当初の申請内容の日本だけでなく、韓国と台湾にも拡大して三ヶ国で共通した設問による市民意識調査(平成26年12月1日-7日)を行った。(4)第23回参議院議員選挙公報データ及び第47回衆議院議員選挙結果データをXML化によるデータ・アーカイヴ化して、データベースに投入した。(5)平成27年度に予定していた統一地方選に際しての意識調査を前倒しして実施した(平成27年2月19日-23日)。(6)平成24年度~平成26年度の研究成果について、Asian Electoral Studies(3件)、Conference Public Management Research Conference、Comparative Study of Electoral System、Southern Political Science Association、日本政治学会(4件)、日本選挙学会、公共選択学会(2件)、比較政治学会などで報告25件(内、招待講演8件)を行うなど積極的に研究発表した。さらに、Emerald Group Publishing Limited(UK)から刊行した共著やJapanese Journal of Political Science掲載査読付き論文など、著書5点、論文18件を公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(1)急な衆議院解散総選挙に対応し、調査地点の抽出ならびに各調査地点における性別・年代別割当などの設計を調査会社に委託せずに自分達で行うことで捻出した経費により事前・事後パネル意識調査を実施した。また選挙公約分析についても、想定していなかった平成26年衆院選に立候補した全候補者(小選挙区選挙)の選挙公約を収集・内容コーディングを実施した。さらに、国会議事録内容分析については、計画通りの衆参両院の国会議事録の内容分析を行った。(2)代議制民主主義の分析対象を当初の申請内容の国政レベルだけでなく、自治体レベルにも拡大し、抽出した3道県の有権者を対象とする意識調査を実施するとともに、自治体政策担当者に対するヒアリングを計6回実施し、自治体レベルにおける代議制民主主義の分析を行った。(3)代議制民主主義に関する国際共同研究を積極的に推進するために、昨年度に協定を締結したソウル国立大学行政学大学院の研究所(RIAS-SNU)に引き続き、台湾国立政治大学選挙研究所(ESC-NCCU)と協定を締結した。このため、代議制民主主義の分析対象を当初の申請内容の日本だけでなく、韓国と台湾にも拡大して政治意識調査を行い、国際比較の分析を行った。(4)平成27年度に予定していた統一地方選に際しての意識調査を前倒しして実施した(平成27年2月19日-23日)。(5)このように当初の申請計画を上回る研究遂行により、申請時の予定5年間で8件を大幅に超える3年間で計20件の意識調査を実施し、国内外の多くの研究者に提供している。(5)第23回参院選の選挙公報データと想定外であった第47回衆院選市区町村結果をXML化してデータ・アーカイヴ化し国内外の研究者に提供している。
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今後の研究の推進方策 |
今後、平成27年度及び平成28年度に下記の研究活動を推進する。(1)平成27年度に実施予定であった統一地方選挙時の意識調査は平成26年度末に前倒しして行っているため、平成27年度後半に第24回参院選から適用される選挙権年齢引き下げにより18歳以上を対象とする意識調査を実施する。また、平成28年度夏に行われる第24回参議院議員選挙に際して、選挙前後でパネル調査を実施する。なお、予期せぬ衆院の解散総選挙が行われた場合には、迅速に対応して第48回衆議院議員選挙に際しても、選挙前後でパネル調査を実施する。この他、代議制民主主義の分析を国政レベルだけでなく自治体レベルにも拡大し、適切な自治体を抽出して意識調査を実施する。さらに、韓国ソウル国立大学行政学大学院や台湾国立政治大学選挙研究センターとの国際共同研究を推進するため、共同して国際比較調査を実施する。これらの調査データについては、国内外の研究者に提供することで、日本はもとより世界における日本研究に寄与する。(2)代議制民主主義の分析を行うために、第24回参議院議員選挙の全候補者(選挙区選挙)の選挙公約を収集して内容分析し、コーディングしてデータ化する。第48回衆議院議員瀬挙が行われた場合も同様に全候補者(小選挙区選挙)の選挙公約をデータ化する。さらに、衆議院及び参議院の国会議事録を内容分析し、コーディングしてデータ化する。(3)今後、実施する調査データ及び選挙公約、国会議事録についてXML化して、データ・ベースに投入する。これらを通して、政治の基本的なデータベース構築と日本政治に関するデータを国内外の研究者に提供する。(4)本研究では、今後、次の三点において政治学に寄与することにしたい。第一に、従来の比較政治における外形的な比較からもう一歩進めて、代議制民主主義の機能に関する三つの仮説を検証し、代議制民主主義に関するより高い水準の理論構築を行う。第二に、選挙研究に関する従来の理論の検証を重ねることで、選挙研究に関するより高い水準の理論構築を行う。具体的には、選挙における「勝者」と「敗者」の相違が参加行為と政治的有効性感覚の関連に与える第三者効果(Curini2012, Howell2013, Singh2014)の検証やマルチストモデルの検証などを行い、政治学に寄与することにしたい。第三に、調査方法に関して、従来の面接調査における回収率の低下と費用の高騰に対応するために、マルチメソッド(面接・郵送・電話・インターネットの各方法)による調査結果の相違の分析を通して、最適な調査方法を構築し、政治学のみならず社会科学全体に寄与することにしたい。(5)上記国際共同研究の成果を公表するために、平成27年10月にAES(Asian Electoral Studies)の国際シンポジウムを慶應義塾大学(三田キャンパス)東館で開催し、日韓台三各国のみならず、欧米の政治学者を交えて本研究の成果の公表と討論を行う。また、市民社会を模索するサウジアラビアのAl Ghad Foundation(理事長はサウジアラビア王室Princess)から世界の優れた市民社会研究として選定され、同財団と国際研究協力の協定を締結したことから、同国の研究者との間で国際共同研究を行い、その研究成果を国際シンポジウムを開催して公表する予定である。(6)これら本研究の成果については、学術誌掲載論文や学会報告で公表する他、叢書(全5冊)として刊行(1冊は刊行済)することで出版社(木鐸社)と合意しており、叢書以外と併せて計10冊の研究書を刊行する。
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