研究課題/領域番号 |
24000002
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
小林 良彰 慶應義塾大学, 法学部, 教授 (40153655)
|
研究分担者 |
平野 浩 学習院大学, 法学部, 教授 (90222249)
山田 真裕 関西学院大学, 法学部, 教授 (40260468)
谷口 将紀 東京大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (60251435)
名取 良太 関西大学, 総合情報学部, 教授 (60330172)
飯田 建 同志社大学, 法学部, 准教授 (50468873)
|
研究期間 (年度) |
2013 – 2016
|
キーワード | 政治学 / 政治意識 / 市民社会 / 選挙公約 / 内容分析 / 民主主義 / 日本・韓国・台湾 / データベース |
研究実績の概要 |
平成27年度は次の研究を行った。(1)平成27年度は国政選挙がない年であることから、平成27年度後半に実験的手法による意識調査を実施した。具体的には、実験調査として有権者の各新聞に対する認識が新聞の内容に対する評価に与える影響を分析するため、被対象者を購読紙と実験的に閲読させる記事によって4グループに分け、報道への信頼度や内閣業績評価などに与える影響を分析した。さらに、被対象者を無作為に3グループに分け、調査者が制作した架空のニュース番組映像を視聴させた後、沖縄県の普天間にある米軍基地の移設問題やエンテロウイルスに関する設問を尋ねることで、テレビのニュース番組構成が、人びとの外交・安全保障政策や感染症に関する意見に与える影響を分析した。(2)第24回参院選から適用される選挙権年齢引き下げにより18歳以上を対象とする意識調査を実施し、18歳・19歳有権者と20歳以上有権者の政治意識の差違、ならびにその差違をもたらす要因を分析した。(3)代議制民主主義の分析を行うために、第24回参議院議員選挙の全候補者(選挙区選挙)の選挙公約を収集して内容分析し、コーディングしてデータ化した。第48回衆議院議員選挙が行われた場合も同様に全候補者(小選挙区選挙)の選挙公約をデータ化した。さらに、衆議院及び参議院の国会議事録を内容分析し、コーディングしてデータ化して、データベースに投入した。これらを通して、政治の基本的なデータベース構築と日本政治に関するデータを国内外の研究者に提供した。(4)これらの研究を通して、第一に、従来の比較政治における外形的な比較からもう一歩進めて、代議制民主主義の機能に関する三つの仮説を検証し、代議制民主主義に関するより高い水準の理論構築を行った。第二に、調査方法に関して、従来の面接調査における回収率の低下と費用の高騰に対応するために、マルチメソッド(面接・郵送・電話・インターネットの各方法)による調査結果の相違の分析を行い最適な調査方法を考案した。(5)上記国際共同研究の成果を公表するために、平成27年10月にAES (AsianElectoral Studies)の国際シンポジウムを慶應義塾大学で開催し、日韓台三各国のみならず、欧米の政治学者を交えて本研究の成果の公表と討論を行った。(6)セキュリティを強化するためにデータベースのOSをWindows Server 2003からWindows Server 2012にヴァージョンアップした上で全てのデータを再インストールした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(1)2012年12月と2014年12月の二度にわたる急な衆議院解散総選挙に対応し、調査地点の抽出ならびに各調査地点における性別・年代別割当などの設計を調査会社に委託せずに自分達で行うことで捻出した経費により事前・事後パネル意識調査を実施した。また選挙公約分析についても、想定していなかった平成26年衆院選に立候補した全候補者(小選挙区選挙)の選挙公約を収集・内容コーディングを実施した。さらに、国会議事録内容分析については、計画通りの衆参両院の国会議事録の内容分析を行った。(2)代議制民主主義の分析対象を当初の申請内容の国政レベルだけでなく、自治体レベルにも拡大し、抽出した3道県の有権者を対象とする意識調査を実施するとともに、自治体政策担当者に対するヒアリングを計10回実施し、自治体レベルにおける代議制民主主義の分析を行った。(3)代議制民主主義に関する国際共同研究を積極的に推進するために、昨年度に協定を締結したソウル国立大学行政学大学院の研究所(RIAS-SNU)に引き続き、台湾国立政治大学選挙研究所(ESC-NCCU)と協定を締結した。このため、代議制民主主義の分析対象を当初の申請内容の日本だけでなく、韓国と台湾にも拡大して政治意識調査を行い、国際比較の分析を行った。(4)平成27年度に予定していた統一地方選に際しての意識調査を前倒しして実施した(平成27年2月19日-23日)。(5)このように当初の申請計画を上回る研究遂行により、申請時の予定5年間で8件を大幅に超える4年間で計22件の意識調査を実施し、国内外の多くの研究者に提供している。(5)第23回参院選の選挙公報データと想定外であった第47回衆院選市区町村結果をXML化してデータ・アーカイヴ化し国内外の研究者に提供し、オープンアクセスを日本の学術の文化とすることに寄与している。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度は次の研究を行う。(1)7月に行われる第24回参議院議員選挙に際して、事前調査及び事後調査を実施する。これら調査はJESIVから2012年衆議院議員選挙を通して継続しているパネルサンプル及びパネルサンプルを補充する新規サンプルを対象として行う。具体的には、第24回参院選における投票政党、政党評価、政党支持、政党感情温度、次回衆院選における投票予定政党、内閣支持、内閣業績評価、業績期待、首相に対する認知・感情、政策争点態度と各政党の争点立場認知、政治参加、投票参加に対する態度と経験、各種争点に対する意見、各種社会集団に対する意見、政治情報への接触と情報処理、政治知識、政治的効力感、政治的価値観、政治・社会制度に対する信頼感、及び属性項目(性別、年齢、生年月日、職業、学歴 など)に関する設問を調査する。(2)また、韓国ソウル国立大学行政学大学院や台湾国立政治大学選挙研究センターとの国際共同研究を推進するため、共同して国際比較調査を実施する。(3)衆議院及び参議院の国会議事録を内容分析し、コーディングしてデータ化する。(4)平成28年度に実施する調査データ及び第24回参議院議員選挙の選挙公約、国会議事録についてXML化して、データ・ベースに投入する。これらを通して、政治の基本的なデータベース構築と日本政治に関するデータを国内外の研究者に提供する。(5)選挙研究に関する従来の理論の検証を重ねることで、選挙研究に関するより高い水準の理論構築を行う。具体的には、選挙における「勝者」と「敗者」の相違が参加行為と政治的有効性感覚の関連に与える第三者効果(Curini2012, Howell2013, Singh2014)の検証やマルチストモデルの検証などを行い、政治学に寄与することにしたい。(6)平成28年10月にAES (Asian Electoral Studies)の国際シンポジウムを台湾国立政治大学で開催し、日韓台三各国のみならず、欧米の政治学者を交えて本研究の成果の公表と討論を行う。また、市民社会を模索するサウジアラビアのAl Ghad Foundation (理事長はサウジアラビア王室 Princess)から世界の優れた市民社会研究として選定され、同財団と国際研究協力の協定を締結したことから、同国の研究者との間で国際共同研究を行う。(7)これら本研究の成果については、学術誌掲載論文や学会報告で公表する他、叢書(全5冊)として刊行(1冊は刊行済)することで出版社(木鐸社)と合意しており、叢書以外と併せて本研究期間中に計10冊の研究書を刊行する。
|