研究課題/領域番号 |
24000008
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
山崎 泰規 国立研究開発法人理化学研究所, 原子物理特別研究ユニット, ユニットリーダー (30114903)
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研究分担者 |
ULMER Stefan 理化学研究所, Ulmer国際主幹研究ユニット, ユニットリーダー (50624813)
松田 恭幸 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (70321817)
永田 祐吾 東京農工大学, 工学研究科, 特任助教 (30574115)
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研究期間 (年度) |
2013 – 2017
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キーワード | cpt対称性 / 反水素 / 反陽子 / 陽電子 / 磁気モーメント / マイクロ波分光 / ディープラーニング |
研究実績の概要 |
超低エネルギー反陽子ビームの生成 : 反陽子トラップから二重カスプ超伝導電磁石中に設置した反水素合成トラップへの反陽子輸送の完全な断熱化に成功した。輸送エネルギーはこれまでより一桁低い1.5eVを実現した。これにより、反陽子と陽電子の混合時の陽電子加熱をほぼ無視できるレベルまで抑えることに成功した。 この超低エネルギー反陽子ビームと陽電子プラズマの非加熱的混合により、高いレートでの反水素合成に成功した。一方、反陽子と陽電子が急速に軸方向分離するという予想外の現象に遭遇し、当初予定していた大量の冷反水素を得ることはできなかった。現在その原因を研究しており、平成29年度のビームタイムにおける解明を目指している。 二次元飛跡読み出し機能を持つBGOシンチレーターと二重ホドスコープを組み合わせた反水素ビーム検出器は、順調に稼働している。特にホドスコープ用シンチレーターの時間分解能向上を実現し、BGO上での反陽子消滅に伴う多重トラックと宇宙線の通過に伴う疑似多重トラックの分離性能を大幅に改善した。これにより、宇宙線によるバックグラウンドは、実用強度の反水素ビームが得られた場合には、ほぼ無視できるレベルまで抑えることができるようになった。 マイクロメガ検出器による反陽子消滅パターンを高信頼度で解析するため、ディープラーニング法を取り入れた分析を進めた。 単一反陽子の捕捉制御と超高精度測定 : 懸案であった反陽子の磁気モーメントの高精度測定に成功し、これまで知られていた精度を一挙に6倍向上した。磁気モーメントのさらなる高精度化を進めている。 反陽子の寿命測定は更に進み、10年を超えていること、これは従来の測定結果を7倍程度延ばすものであることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1. これまでに無い超低エネルギー(1.5eV)での大強度反陽子ビーム生成、輸送に成功した。 2. これにより、陽電子プラズマを加熱すること無く反陽子-陽電子の混合が可能になった。 3. 予想通り、混合直後には大変高い反水素合成率が得られた。 4. 一方、入れ子トラップ中の反陽子と陽電子は、予想外に軸方向分離を起し、ごく短時間のうちに反水素合成が止まってしまい、当初予想していた反水素の大量生成には至らなかった。現在その原因の究明を進めており、これが遅れの原因となった。 5. 反陽子の磁気モーメントの高精度測定に成功し、これまでの記録を6倍塗り替えた。 6. 反陽子の寿命測定に成功し、これまでの記録を7倍塗り替えた。
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今後の研究の推進方策 |
1. 入れ子トラップ中の反陽子と陽電子の分離過程を明らかにし、それを防ぐことにより、反水素合成効率を飛躍的に向上する。 2. 何らかの不可避の物理過程により反陽子と陽電子の分離が進行していることが判明した場合に備え、入れ子トラップ中での静的な反陽子陽電子混合法を開発する。 3. 反水素合成効率を更に上げるため、陽電子プラズマの冷却法開発を更に進める。 4. 反水素ビーム強度を向上させた暁には、マイクロ波分光を進める。 5. 反陽子の磁気モーメント測定を更に高精度で進める。 6. 反陽子の質量電荷比測定を更に高精度で進める。
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