研究課題/領域番号 |
24000010
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
橋本 和仁 東京大学, 大学院工学系研究科, 教授 (00172859)
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研究分担者 |
中村 龍平 理化学研究所, 環境資源科学研究センター, チームリーダー (10447419)
中西 周次 東京大学, 大学院工学系研究科, 准教授 (40333447)
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研究期間 (年度) |
2012-05-29 – 2017-03-31
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キーワード | 細胞外電子移動 / 代謝経路制御 / 微生物エネルギー変換 / 生体電子移動ダイナミクス / 電気化学的制御 / 微生物腐食 / 集団同期能現象 / 光合成細菌 |
研究実績の概要 |
研究課題1-細胞内電子伝達経路の電極電位制御 電極呼吸するGeobacter菌の網羅的代謝解析を行った結果、炭素代謝経路が電極電位依存的に大きく切り替わることが示された。また、これまでに開発してきた生体親和型電子伝達ポリマーを改良し、酵母(真核生物)の代謝の電気化学制御に新たに成功した。さらに、光合成細菌の電気化学的代謝制御に関する研究も継続して行い、Euglenaにおいて電気化学的に制御された細胞外電子移動により強光阻害を緩和することができることを明らかにした。 研究課題2-生体内電子移動のダイナミクス追跡 光によるCO軸配位子交換反応を用い、鉄酸化細菌Acidithiobacillusの電気化学的炭素固定経路の追跡を試みた。その結果、Acidithiobacillusが電極から電子を獲得しCO2固定を行う能力を有すること、その際の電子伝達系がaa3複合タンパク質を介した鉄酸化代謝経路と類似していることが示された。 研究課題3-細胞間情報伝達による集団同期能現象 微生物の集団同期能に関与するシグナル分子の単離・同定において、単一物質とみられるサンプルを得て解析を進めたところ、当初の予想に反し当該サンプルに複数の物質が含まれることが判明した。研究遂行上この分子を単離・精製することが不可欠であるため、サンプル分離および構造解析の方法について再検討を行い、クロマトグラフィーを用いた分離条件の実験を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題1では、今年度は、昨年度までに光合成細菌で実現してきた細胞内電子伝達経路の電極電位制御法を他の微生物へと展開することを目的として研究を推し進めた。電子伝達ポリマーの分子構造(分子量と組成比)を改良することで、これまでに実現していなかった酵母代謝の電気化学制御を達成し、上記手法の適用範囲を広げることができた。また、酸化還元電位が低い新しい電子伝達ポリマーの合成に成功した。 研究課題2においては、CO2固定能を有する化学独立細菌の生体内電子移動反応のin vivo観測を目的とし研究を推し進めてきた。CO光応答性を有する代謝電流の一部が、ルビスコを介した炭素固定代謝に利用されていることが明らかとなり、化学独立細菌の生体電子移動を計測するための系の構築に成功した。 電流生成菌の集団同期現象の解明を目指す研究課題3に関しては、シグナル分子の分離が予想以上に困難であり時間が掛かっているが、条件検討の確立は着実に進んでいる。それにより、今後のシグナル分子の同定、ひいては新しい細胞間情報伝達機構の解明にむけて、その技術的基盤の構築を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
細胞内電子伝達経路の電極電位制御については、新たに合成した低酸化還元電位の電子伝達ポリマーを用いて微生物への電子注入と、それによる代謝制御に挑戦する。また、電子伝達ポリマーの構造最適化をさらに進め、光合成細菌の代謝のより精密な制御を試みる。 また、生体内電子移動計測においては、外膜タンパク質解析ならびに遺伝子発現解析により電気を一次エネルギー源とした生物学的炭素固定(電気合成代謝)経路の同定を試みる。 集団同期能機構解明においては、未知なるシグナル分子の同定が不可欠であることから、シグナル分子の構造決定を行うため、これまでに確立した大スケール培養実験を進め、分離条件の検討をさらに進めていく。
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