研究課題/領域番号 |
24000011
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
熊谷 泉 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10161689)
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研究分担者 |
梅津 光央 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70333846)
浅野 竜太郎 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80323103)
津本 浩平 東京大学, 医科学研究所, 教授 (90271866)
田中 良和 北海道大学, 先端生命科学研究科(研究院), 准教授 (20374225)
真壁 幸樹 山形大学, 理工学研究科, 准教授 (20508072)
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研究期間 (年度) |
2012-05-29 – 2017-03-31
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キーワード | 分子認識 / タンパク質 / ナノバイオ / バイオテクノロジー / 抗体 |
研究実績の概要 |
本研究では、様々な分子構造を認識でき得るタンパク質の抗体分子に着目し、その機能抗体断片を構成要素として接合対象素材によらず素材間をナノレベルで正確に接合・アセンブリ制御できるバイオインターフェイス分子を創出するプラットフォーム技術を開発する。そのために、本年度は下記の研究を行った。 (1)細胞表面に特異的な抗体断片の人工選択操作による取得へ向けた抗原調製:リンパ球の表面に存在する受容体の可溶性断片を大腸菌で発現させたところ、不溶性の凝集体として発現したが、巻き戻し操作によって目的活性を持つ可溶性断片を調製することに成功した。 (2) ペプチド移植と分子進化成熟操作による材料高親和性抗体の作製:ペプチド移植と分子進化工学を組み合わせた抗体取得法を利用して、金属やセラミックスに結合する抗体断片の取得を行った。その結果、ペプチドの状態では数μM程度の平衡解離定数であったものを平衡解離定数が206 nMまで向上させることに成功した。また、酸化すずを対象として、特定結晶面に優位に結合するペプチドの取得にも成功した。 (3) 取得抗体断片の構造解析:抗EGFR抗体とEGFRの共結晶作製を行い、結晶化に必要な最適条件を検討したところ、標的分子であるEGFRの構造的均一性が結晶作成に重要であることがわかった。また、酸化亜鉛結合性抗体をNMRで測定したところ、各原子の化学シフト値を帰属できる分解能を持つスペクトルを得られる見込みができた。 (4) 二重特異性抗体の機能解析:二重特異性分子のフォーマットの違いによる構造安定性を示差走査熱量測定にて評価したところ、構造安定性と機能安定性に有意義な相関は見られなかった。また、フォーマットにおける結合特性の変化についても表面プラズモン共鳴と等温滴定カロリーメータでも行ったが、二重特異性分子にしても各要素の抗原結合性は変化しないことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、細胞表面に特異性を持つ抗体取得に必要な標的分子の取得に成功し、また、特定材料表面に結合性を持つ抗体の取得にも成功している。構造解析に関しても、NMRを用いた構造解析は予定通り進捗している。X線結晶構造解析に関しては、タンパク質の結晶作成が当初の予定よりも進捗が遅れているが、結晶を作成する必要がない小角X線散乱法を利用することによって必要な情報を得れば、研究は予定通り遂行できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度作製した標的分子を用いた標的分子特異的抗体の選択と、それら選択された抗体とこれまで作製に成功している抗体の断片を利用して細胞間・ナノ工学材料間を繋ぐ二重特異性抗体を作製する。そして、作製した抗体の構造解析をX線結晶構造解析, 小角X線散乱法, NMR等を用いて多角的に行うことによって、計画通り研究を推進できるようにする。そして、細胞間を繋ぐ二重特異性抗体に関しては、リンパ球とがん細胞間の架橋に特化して、架橋構造と細胞傷害の相関を、抗体の結合機能などのパラ-メーターで指標化することを試みる。ナノ材間を繋ぐ二重特異性抗体に関しては、絶縁性のセラミックスと金属や発光性半導体ナノ素材を連結させることによって、高機能触媒, 光増幅膜, 光回路などの機能発現を目指していく。
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