研究課題/領域番号 |
24000012
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
浅田 稔 大阪大学, 工学研究科, 教授 (60151031)
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研究分担者 |
細田 耕 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (10252610)
内藤 栄一 独立行政法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター, 研究マネージャー (10283293)
菊知 充 金沢大学, 子どものこころの発達研究センター, 特任准教授 (00377384)
長井 志江 大阪大学, 工学研究科, 特任准教授(常勤) (30571632)
森 裕紀 大阪大学, 工学研究科, 助教 (80610849)
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研究期間 (年度) |
2012-05-29 – 2017-03-31
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キーワード | 大規模詳細脳神経系モデリング / 胎児・新生児シミュレーション / 脳磁図(MEG) Hyperscanning / 身体的自己意識 / 母子相互作用 / 随伴性 / 発話ロボット / 乳幼児酷似ロボット |
研究概要 |
来年度以降のグループ統合を視野に本年度は、各グループ毎の成果に重点を置いて活動し、外部発表可能なものは、投稿及び出版した。 1. 理論・シミュレーショングループ : 詳細大規模な脳神経系モデル開発のため、環境とのインターフェースとしての触覚細胞のスパイクニューロンモデルを実装し、動作確認した。また、親子間相互作用等の解析のために、既存の因果関係解析手法とクラスタリング手法を組み合わせた手法を開発した。 2. イメージングG : fMRIグループでは、これまでの研究の成果を学術論文および総説として報告した。合わせて、子供(小学生)のMRI脳活動計測という特殊な研究環境の立ち上げと整備に尽力し、およそ環境を整えた。MEGグループでは、2台の脳磁計による脳機能同時計測装置を開発し、評価を行った。その成果は学術誌Frontiers in Human Neuroscienceに掲載された。 3. 行動心理G : 感覚―運動経験を通した随伴性の学習、目標指向動作の学習、他者運動の理解等の研究を通じて、乳幼児の発達メカニズムのそれぞれモデルを構築し、その有効性を確認した。身体レベルからの同調・脱同調にもとづく自他認識の発達モデル構築として、視線随伴パラダイムを応用した課題開発に取り組んだ。また、運動同調による母子間の間主観(共感)メカニズム構築を目指して, オキシトシン作用系についての仮説提起、リズム相互作用ロボット実験システムの開発、計算モデル化を実施した。 4. ロボットプラットフォームG : 写実柔軟子供ロボットの上半身動作制御し、人との相互作用性能評価実験を開始した。イメージング研究に利用可能かつ、実時間相互作用可能なハプティックデバイスの基本設計をし、試作したが、個人差への対応困難から、設計を見直した。また、ヒトの乳児様発声可能な舌駆動機構の小型化による乳児様発話ロボット"Lingua"を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
グループ毎に若干の差があるものの、全体として、おおむね順調に進展している。理論・シミュレーションGでは、モデルの動作確認したが、実身体への実装が若干遅れている。それに対し、因果関係検出は、予備実験を終え、本格的検証が始まっている。 イメージングGでは、ロボットなどの人工物を介した心的機能の行動心理実験、イメージング研究をまとめた論文出版など、着実に成果が上がっている。また、MEGの親子同時計測装置の実装も整い、これからが勝負である。 行動心理Gでは、乳幼児ならびに親子間相互作用の発達モデル化が着実に進んでいる。さらに、オキシトシンを用いた共感のイメージングGとの連携も計画されており、新たな成果が望まれる。 ロボットプラットフォームGでは、写実柔軟幼児ロボットの養育者との相互作用実験が共同研究として開始されており、着実な成果が望めそうである。イメージング研究に利用可能かつ、実時間相互作用可能なハプティックデバイスは、若干開発が遅れているが、その最短化が図られている。乳児様発話ロボット"Lingua"は、聴覚系を整備することで、相互作用実験が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
1. 理論・シミュレーションG : 一昨年度までに開発したスパイクニューロンによる神経振動子モデルと感覚神経モデル皮質モデル、胎児・新生児の全身筋骨格モデルを統合し発達シミュレーションを行う予定である。また、上記神経モデルを組み込んだ多者間インタラクションのシミュレーション実験を行う予定である。 2. イメージングG : (1) fMRIグループ : H26には、6歳から12歳までの子供のどの発達段階で、身体的自己意識に関わる右半球優位性が出現するのか、言語機能の左半球優位性との関係も考慮したMRI研究を行う。 (2) MEGグループ : 平成25年度に開発した装置を使用し、親子同時計測実験を進める。親子間で生じる相互の意図の探索や共感の脳内表現を検討する。これと並行して幼児の行動面と脳の発達について縦断的な調査を進める。縦断的に変化していく脳の特徴と、変化していく幼児コミュニケーション能力や、認知機能について、関連性の解析を進めていく。また、MEGの環境的制約によって困難が伴う座位での対面状況やロボットの実機を使用する必要のある実験は、EEGの利点を生かして行う予定である。 3. 行動心理G : 予測学習モデルを複数の感覚・運動情報に拡張することで、自他認知に関わる様々な認知機能の発達を説明することを試みる。運動と触覚との関係から、自己の身体イメージを獲得したり、他者運動の理解に、感覚経験の予測学習だけではなく、自己の運動経験の予測学習を追加することで、ミラーニューロンシステムのような自己の運動に基づく他者運動の理解のメカニズムを構成的に研究する。 今後は人間とロボットのリズムインタラクションの解析を進めることで、前述のモデルをより精緻化していきたい。オキシトシンサプリメントを投与した際の同調現象の変化も解析したいと考えている。さらに実際の母子相互作用場面における同調を計測する手法について確立することで、よりモデルを現実的なものとしていきたい。 4. ロボットプラットフォームG : より詳細な母音発話能力の評価を行う。口唇機構を開発し、子音発話を実現する。聴覚神経系を構築し、音声模倣・学習、喃語発話を目指す。発話の印象評価を行う。 イメージング研究に利用可能かつ、実時間相互作用可能なハプティックデバイスの基本設計をし、試作を行った。その結果、被験者に装着する際の手の大きさの個人差に対応することができないことがわかり、設計の見直しを行った。 触れあい実験の実験設定を詳細に詰め、写実型柔軟子供ロボットの備える相互作用性能を評価する。皮膚変形機構を洗練するとともに、口唇部の表情表出にも応用する。下肢機構を覆う皮膚の性能を評価する。
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