研究分担者 |
細田 耕 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (10252610)
内藤 栄一 国立研究開発法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター, 研究マネージャー (10283293)
菊知 充 金沢大学, 子どもこころの発達研究センター, 教授 (00377384)
長井 志江 大阪大学, 工学研究科, 特任准教授 (30571632)
石原 尚 大阪大学, 工学研究科, 助教 (90615808)
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研究実績の概要 |
本研究課題に即し, 本年度は以下の実績を挙げた(以下, 国際会議論文発表をIP, ジャーナル論文をJPと略記). 1. 理論・シミュレーション : 神経と身体ダイナミクスの関係を解析した(IP). また, 神経ネットワークのトポロジカルな構造が巨大神経ネットワークの挙動の複雑性に影響を与えることをシミュレーションで明らかにした. 2. イメージング : fMRI関係では, 自己顔認知課題や外部リズムに同調する運動タスクにおいて, 共通の脳部位が関連すること, さらに小学生の発達時期において, これらのタスクに関連する脳部位が未熟であることが判明した(JP投稿中). MEG関連では, 自閉症児特有の聴覚の発達, マルチスケールエントロピーによる複雑性解析などの個人の脳活動解析(以上, JP発表済み)に加え, 親子同時測定による対面課題やリズム同調課題による相互作用中の脳活動解析, さらには, ネットワーク構造の特徴からの定型/非定型発達の識別(現在, さらなる解析継続中)などの成果が上がっている. 3. 行動心理およびモデリング : アフォーダンスの発達に関連する二編のJP発表に加え, 予測学習理論に基づく各種認知行動の獲得過程が示された(IP), ロボットとの協調ドラミングタスクにおいて, 人間側がロボットに追従されると錯覚する現象の解析や関連するイメージング研究の予備実験も終えている. 4. ロボットプラットフォーム : 写実型赤ちゃんロボットAffettoが対人相互作用に必要な身体の設計指針をJPとして発表し, また, このロボットに実装することを想定して開発した磁気式の柔軟触覚センサの開発を進め, 電磁気応用の学会で表彰を受けた. さらにボーカルロボットLinguaは, 声帯, 口唇, 舌機構などを改良し, IP済み. MRIスキャナーで利用可能なマスタースレーブシステムは, プロトタイプの開発を終え, その構造および制御手法について国内会議で発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
神経ダイナミクスのシミュレーション結果とMEGによるイメージング解析結果との間で, ネットワークの挙動に共通性がみられ, これにより神経ダイナミクスから社会的相互作用に至る過程の理解に対して, 1つの仮説を立てることが可能になった. また, 予測学習理論が基本的な学習構造として働くことが複数の認知機能の学習で示されてきており, 構成的発達科学の基礎となる, 神経構造, および学習手法が示されつつある. 加えて, 自己認知の発達過程のfMRI研究もモデリング過程が加わり, 実ロボットによる実証実験が加わることで, 構成的発達科学の基盤を構築することが可能である.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に向けて, 「構成的発達科学」構築に向けた研究の推進およびとりまとめに専念する. 主に以下の3つ項目を中心として進める. 1. 神経ダイナミクスと社会的相互作用というミクロとマクロを繋ぐ表現として, ネットワーク構造のパラメータを用い, 多重エントロピー解析による複雑性を指数として, 大規模神経ネットワークシミュレーション結果とMEGなどのイメージング研究の結果をつき合わせる. マクロな挙動の要因が, ミクロな神経ネットワークのパラメータにあるとの仮説をたて, その検証に努めることで, 構成的発達科学のひとつのあり方を示す. 2. 構成的発達科学における基本的な学習手法として, 予測学習理論を提案し, 各種の認知機能の学習に共通する基盤として確立する. リズム協調タスクにおける予測性の役割りをモデル化し, このモデルを検証するために, 各種イメージング研究との連繋を図る. これらの研究を通じて, 構成的発達科学の学習基盤構造としての「予測性」の重要性を明確にする. 3. 上記の過程に課題について, 可能な範囲で, 対人用ロボットプラットフォームを用い, 検証のための各種相互作用実験を実施する. Affettoを用いた物理的相互作用実験, 顔表情表出による情動的コミュニケーション実験を通じて, 構成的発達科学におけるロボット実験の役割りを明確にする.
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