研究課題/領域番号 |
24000013
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
岸野 克巳 上智大学, 理工学部, 教授 (90134824)
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研究分担者 |
大槻 東巳 上智大学, 理工学部, 教授 (50201976)
関口 寛人 豊橋技術科学大学, 工学研究科, 講師 (00580599)
光野 徹也 静岡大学, 工学研究科, 助教 (20612089)
江馬 一弘 上智大学, 理工学部, 教授 (40194021)
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研究期間 (年度) |
2012-05-29 – 2017-03-31
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キーワード | 窒化物半導体 / ナノコラム / 三原色 / LED / フォトニック結晶 / 超細線化 / ランダムレーザ / 選択成長 |
研究実績の概要 |
本研究は、規則配列GaNナノコラムのコラム径細線化で発現されるナノ結晶効果の学術的解明を進め、InGaN系窒化物半導体デバイスが直面する材料的課題を克服に挑戦し、可視域ナノコラム発光デバイスを開拓することを目的としている。 1. ホール径10-20nmまでの微細Tiマスクパターンの作製に成功し、二段階成長に基づく新たな選択成長法を開拓し、規則配列GaNナノコラムの革新的なコラム径細線化(コラム径28nm)を達成した。 2. AlGaN選択成長に適した新構想のナノテンプレート選択成長法の開拓を進め、全Al組成比で規則配列AlGaNナノコラム選択成長に成功し、成長メカニズムを探求して、AlGaN光閉じ込め層内在化の成長法を開拓した。グラフェン/SiO2上の自己形成GaNナノコラムの高密度成長に成功した。 3. ナノコラム細線化で顕在化するナノ結晶効果の解明を進めた。世界で初めて、ナノコラムの貫通転位フィルタリングのコラム径依存性を系統的に探究し、コラム径200nm以下で無転位性ナノコラムが得られることを示した。InGaN(3nm)単一量子井戸ナノコラムの時分解フォトルミネッセンス評価を行い、コラムの細線化とともに、In組成揺らぎの大きさを示す局在エネルギーが大きく減少することを示した。歪緩和効果と光取り出し効率のコラム径依存性を理論的に検討した。 4. 規則配列ナノコラム集団の配列ゆらぎの効果を探究し、ごくわずかな配列ゆらぎが、フォトニックレーザからランダムレーザへの移行をもたらすことを、数値的、実験的に明らかにした。 5. ナノコラム領域下部にAlGaN/GaN多層膜層を作りこみ、光閉じ込め構造を導入して、強励起下でナノコラムレーザ発振の安定化と偏光度の増大化を進め、低しきい値(0.15kW/cm2)発振を得た。 6. 直径600nm程度の単一GaNナノコラムで微小光共振モードによるレーザ発振を実証した。 7. Si基板上に選択成長によって規則配列InGaN系ナノコラムを成長し、Si基板除去とフリップチップ実装法を開拓し、自立ナノコラムLEDを試作して、波長549nmの黄緑色LED発光を得た。 8. 黄色発光(波長572nm)ナノコラムLEDでフォトニック結晶効果を発現させ、±20度の狭い放射角をもつ指向性の高い放射ビーム特性を得た。赤色LEDを試作し、特性評価を進めた。 9. フォトニック結晶効果を集積型LEDに適用し、放射ビーム指向性の高い緑色、黄色、橙色ナノコラムLEDの一体集積化に成功した。さらに、発光色制御メカニズムの検討を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1. GaNナノコラム超細線化では、超微小径(10-20nm)のナノホールパターンを用いるため、不均一な結晶核形成によって成長欠損が起こり、微細コラム径(50nm以下)のナノコラムの均一成長はきわめて難しく、世界的にも達成されていない。当初計画では平成27年度での実現を目指していたが、二段階成長法という斬新な選択成長法を工夫し、コラム周期70nmでコラム径28nm(周期100nmではコラム径25nm)までの三角格子に規則的に配列されたナノコラムの均一化を達成した。これによって超細線領域までの光物性評価を前倒しで進める素地が確立された。 2. 異なる発光色の集積型ナノコラムLEDは、本研究プロジェクトの主たる目標である。プロジェクション型LEDディスプレイ応用上では、放射角の狭い放射ビーム特性をもつLEDの一体集積化が望ましいが、原理的には可能であるものの技術上の難しさが予測され、当初は必ずしも計画に含めていなかった。これに対して、緑~橙色域の狭い発光色であるが、フォトニック結晶効果を発現させつつ、放射指向性の高いLEDを作りこみ、この高機能・集積型LEDの実証に成功した。 3. グラフェンは、高い電気/熱伝導性に加えて、光透過性とフレキシブル性が高く、発光デバイスの最適な電極材料として期待されるが、結晶の核形成層としても利用される。本研究では、Si02/Si基板上に張り付けたグラフェン上において、AlNバッファー層を活用して、無転位で高密度の自己形成GaNナノコラムの成長に成功した。研究計画段階では予期しなかった革新的な成果で、これにより誘電体多層膜あるいは金属からなる高反射率ミラー上ヘナノコラムLED/LD作製され、デバイス性能を向上させ、フリップチップ型LEDの作製も容易になり、本研究の目標達成に向けて大きな技術基礎が確立された。
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今後の研究の推進方策 |
1. 開拓した二段階成長法を深化させて、規則配列GaNナノコラム超細線化の成長再現性を向上させ、コラム径を30-300nmの範囲で系統的に変化させながら、同一成長条件でナノコラムアレイを成長させ、GaNあるいはInGaN/GaN量子井戸ナノコラムの光物性現象を探究し、前年度に引き続いて、ナノコラム細線化で発現されるナノ結晶効果を明らかにする。 2. コラム径50nm以下のナノコラム超細線化で発現されうるナノコラム物理、たとえば、InGaN量子ドット効果、エキシトン束縛エネルギー、バンドギャップ縮小効果、1元量子輸送現象(伝導及びフォノン)の研究を開始する。LEDチップ化、ダイボンディング、ワイヤボンディング法を検討して、積分球による発光効率の測定を進める。ナノコラムのトポロジカル絶縁体などの新規分野への展開の可能性について、探索を開始する。 3. フリップチップ型自立ナノコラムLEDの試作を進め、LED特性の高性能化を図る。微小発光ナノコラムLEDの2次元アレイ化のための実装法を探究しつつ、併行して、ナノコラムLEDの上限配線技術の開拓を進め、高密度ナノコラムLED画素パネル(映像パネル)の基礎技術を探索する。 4. 開拓したナノテンプレート選択成長法を、ナノインプリントによるナノパターン作製と組み合わせ、2インチSi基板の全面に規則配列ナノコラムを成長するための基礎技術を探究する。 5. グラフェンに適合した選択成長法の開拓を進め、グラフェン上に規則配列ナノコラムを作製する手法を探究する。併行して、グラフェンを介して誘電体多層膜もしくは金属からなる高反射鏡上に自己形成ナノコラム結晶を形成するための成長法を開拓し、これらのナノコラム結晶上部に多層膜反射鏡を作りつけ、高いQ値を有する共振器構造を実現する手法の探索を進める。これらによって、面発光型レーザ、単一光子発生、ポラリトンレーザなど、ナノコラムデバイス新展開に向けた基礎を作る。 6. GaNテンプレート上に規則配列ナノコラムを成長させ、ナノコラムデバイス結晶を作り、その光応答特性を測定して、複雑な断面構造を有するデバイス構造に対して、フォトニックバンド端波長のナノコラム構造依存性を実験的に明らかにして、デバイス設計のための基礎資料をうる。これをもとにして、前年度に引き続いて、ナノコラムフォトニック結晶効果による面発光型レーザの開拓を進める。 7. ナノコラムに関連したレーザ・LED現象について探求する。引き続いて、ナノ・マイクロディスクのウイスパリーギャラリーモードによる微小共振器レーザの研究を進める。また、新たな方向性として、ナノコラムへの希土類(Euなど)ドープの探索実験を開始する。ナノコラムでは結晶品質を劣化させずにドープ量を増加できる可能性が高く、狭スペクトル幅発光によって、ナノコラムLED/LDの特性向上に寄与しうる。これらの二つの検討は、ナノコラム発光デバイス実現に向けた別のアプローチ法である。 8. 三原色集積型ナノコラムLEDを試作し、RGB発光特性の高性能化のための基盤技術を探究する。超微細領域内(たとえば10×10μm2)の三原色集積型ナノコラムLEDを探究して、微小スポットフルカラー発光に対応する新世代LED基盤技術の開拓を進める。 9. GaNナノコラム内にInGaN-MQWを内在化させ、50nm以下までのコラム細線化に挑戦し、InGaN量子ドット多段構造を探究する。
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