研究課題/領域番号 |
24000018
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研究種目 |
特別推進研究
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
沈 建仁 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (60261161)
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研究分担者 |
野口 巧 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60241246)
山口 兆 大阪大学, ナノサイエンスデザイン教育研究センター, 招聘教授 (80029537)
庄司 光男 筑波大学, 数理物質科学研究科(系), 助教 (00593550)
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研究期間 (年度) |
2012-05-29 – 2017-03-31
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キーワード | 光合成 / 膜タンパク質 / 結晶構造解析 / 光化学系II / 量子計算 / フーリエ変換赤外分光法 / 電子スピン共鳴 / 酸素発生 |
研究概要 |
1.Mn4CaO5クラスター中のCaをSrで置換し、PSIIを精製・結晶化し、2.1 A 分解能で構造を解析した。その結果、Caに結合していた2つの水分子のうち、W3のみがSrとの結合距離が長くなり、この水分子はCaとの結合が弱く、水分解反応に関わっている可能性が示唆された。 2. PSII単結晶を用いて、S2中間体を得るための光照射の温度と時間を検討した。 3.これまで解析した1.9 A 分解能のMn4CaO5クラスター構造について、S1状態における8個のスピン状態、各スピン状態における6個の混合原子価状態の計48個の可能な電子状態について、量子力学計算(QM)を行い、最も安定な基底電子状態を得ることに成功した。得られた基底状態について構造最適化を行い、X線解析で得られた構造と比較した結果、帰属が不明であった酸素原子O5の可能な状態(H2O, OH-, O2-)を明らかにした。さらにX線結晶構造解析によって得られたMn-Mn, Mn-Ca, Mn-Oの結合距離の一部が構造最適化の結果と一致しないことが分かり、その原因について考察した。 4.フーリエ変換赤外分光法(FTIR)を用いてPSIIの電子移動をモニターすることにより、水分解反応の各中間状態遷移(S0→S1,S1→S2,S2→S3,S3→S0)の効率を見積もる新たな手法を開発した。この手法を用いて、酸素が放出されるS3→S0遷移において最も遷移効率が低くなることを明らかにした。 5.電子スピン共鳴(ESR)を用いて、Mn4CaO5クラスター上のスピン分布について調べ、S2状態でMn1が+3価で、残りの3つのMnが+4価であることが示された。理論計算によるS2状態の構造最適化を行い、左側(Mn4)あるいは右側(Mn1)のMnがIII価になる非対称構造が得られ、後者の方が前者より安定で、ESRの結果と整合することが解った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進展している。量子力学計算の一部は当初の計画以上に進展している。その主要な理由は、筑波大学(分担者庄司)に設置した専用並列計算機を大阪大学(分担者山口)からも使用可能にし、計算の効率が向上したことである
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今後の研究の推進方策 |
水分解のS2, S3各中間状態の結晶構造を解明し、より大規模な量子力学/分子力学(QM/MM)計算を行い構造を最適化する。PSIIの低分子量サブユニット欠失変異株や単量体、及び真核藻類である紅藻由来PSIIの構造解析を行い、それぞれのサブユニットの機能や異なった状態のPSII構造、及び真核藻類と原核シアノバクテリアのPSII構造の相違を明らかにする。また、Mn,Ca,Clの配位子や水分子、プロトン経路のアミノ酸残基に注目して赤外分光および電子スピン共鳴による解析を進め、水分子の反応とプロトン移動経路を明らかにする。
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