研究課題/領域番号 |
24220002
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
石田 亨 京都大学, 情報学研究科, 教授 (20252489)
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研究分担者 |
服部 宏充 京都大学, 情報学研究科, 助教 (50455581)
松原 繁夫 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (80396118)
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研究期間 (年度) |
2012-05-31 – 2017-03-31
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キーワード | ウェブインテリジェンス / サービスコンピューティング |
研究概要 |
本研究の目的は,言語サービス(辞書,機械翻訳など)を集積する「言語グリッド」を連邦制運営によって世界に展開し,国際的かつ持続可能な多言語サービス基盤を確立することである.本目的の達成に向けて,本研究では言語サービスの持続的な集積を可能とする言語サービス提供のためのインセンティブ設計と,複数の独立した組織による世界規模の言語サービス基盤の運用を実現する連邦制運営の制度設計に取り組む. 平成25年度は,インセンティブ設計としてコンテストにおける組織設計法を提案した.例えば,ボランティアに用例対訳を作成してもらう場合,作業品質にばらつきが生じるため逐次的な品質改善が必要となる.ここにコンテスト手法を取り入れることで作業の迅速化が可能となるが,一方で簡単な修正箇所に人が集中するなど作業範囲に偏りが生じるといった弊害が生じる.この問題に対して,集団分割法に着目し,異なるスキルの作業者が混在する形に集団を分割することが有効であることを明らかにした.これにより,報酬付与とは異なる作業の効率化が可能となる. 一方,連邦制運営では,中国(ウイグル)の新疆大学において言語グリッドの運営組織の開設の準備を進め,アジアの各運営組織の代表を集めた言語サービス基盤のワークショップを開催することで,運営組織間の緊密な連携を促進している.さらに,欧米との連携では,欧州のMETA-SHAREに対して,オープンアーカイブの分野においてメタデータの標準的な交換プロトコルであるOAI-PMHを用いることで,言語サービスのメタデータの共有を可能としている.これにより,META-SHAREのユーザに対して言語サービスの検索を提供することで,海外ユーザの増加につながることが期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インセンティブ維持メカニズムに関しては,クラウドソーシング環境における経済的・社会的・道徳的インセンティブの働きを評価し,それをゲーム理論的モデルへの入力として均衡分析しメカニズムを設計している.またインセンティブ促進メカニズムに関しては,貢献度評価法としての評判システムに関して長期的視点に立って振る舞いを分析し,設計課題の絞り込みに成功している.一方,連邦制運営の制度設計に関しては,昨年度のアジア展開に加えて,欧米の言語サービス基盤との連携を加速させている.米国では昨年度準備を進めたNSF言語資源プロジェクトの言語サービス基盤「LAPPS Grid」との相互運用を実現するために,言語サービスオントロジーに関して米国プロジェクトとの協議に着手している.また欧州では言語資源共有基盤「META-SHARE」とのメタデータの共有を進めるために,メタデータ交換プロトコル(OAI-PMH)を導入し,システムレベルでの接続を実現している.このようなフィールドの確立は相手のある事業であり,協力組織との緊密かつ迅速な連携が重要であるため,ラボとなる連邦制運営シミュレータの開発やその上での理論研究よりも優先度を上げ,当初の計画よりも繰り上げて実現している.
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り,本研究は実フィールドである言語グリッドの連邦制運営と,統制実験環境であるAmazon Mechanical Turkやマルチエージェントシミュレーションを密接に結びつけながら研究を進める.インセンティブ設計に関しては,これまでの統制実験環境で検証されてきたメカニズムを,言語グリッド応用アプリのマイクロタスク取引機能として実装し,実システムへ反映して実証を行う.一方,連邦制運営に関しては,異種の言語サービス基盤との連携により拡張してきた実フィールドから言語サービスの相互運用や言語サービスの評価,連邦制ネットワークの安定化といった問題を抽出し,統制実験環境で理論的に解明していく.
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