研究課題/領域番号 |
24220005
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石川 正俊 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (40212857)
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研究期間 (年度) |
2012-05-31 – 2017-03-31
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キーワード | ロボットビジョン / ビジュアルフィードバック / 知能ロボティクス / 高速画像処理 |
研究実績の概要 |
本年度の研究成果をサブテーマごとに以下に示す. (A)高速知能ロボットの速度限界への挑戦 (A-1)ハンド/アーム:高速3次元形状計測とロボット制御のシステム融合として,マスタスレーブシステムを開発した.高速プロジェクタを用いて人間の手に対してラインパターンを照射し,同期した高速ビジョンで手の表面から照射パターンを特徴量として認識することで,情報を高精度に取得する構造化光法を実装した.スレーブ側では高速触覚センサを搭載した高速多指ハンド制御を用いることで,落下物体のキャッチングタスクを実現した.(A-2)下肢:慣性モーメント変化を大きくするための股関節可動範囲の拡大や,回転運動を阻害しないケーブル引き回しのための中空関節軸の導入など,機構の改良を行った.また,高速走行の実験環境として,速度/加速度の制御レンジを拡大したトレッドミルを開発した.検証実験では,4.2km/hの高速走行をしながら従来よりも滞空時間を延長することを達成した.これにより,主要な転倒要因であった着地時の躓きを減少させることを実証した. (B)高速に変動する実環境・対象のダイナミック把握 (B-1)高速3次元形状計測:本年度は,高速ビジョンの新たな認識対象として透明物体に関する研究を行った.具体的には,偏光を用いることで,高速に時間変化する輝度情報から透明物体の表面形状を瞬時に取得する手法を設計した.また,高速ビジョン及び偏光板を搭載した高速中空モータから成るシステムを開発し,手法を検証した.(B-2)高速視線/焦点制御:高速視線制御の高速知能ロボットへの融合として,人間の手の高速トラッキングに基づくじゃんけんロボットを開発し,ロボットへの有用性を示した.焦点制御装置の大口径可変焦点デバイスを開発して,液膜液式の仕組みの有効性を確認し,応答速度を向上するために,駆動装置とレンズ自体の共振周波数を検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は,全体として融合システムの試作および評価と個別デバイスの改良を中心におこない,サブテーマごとの状況は当初の目標を上回るペースで進展している. (A)高速知能ロボットの速度限界への挑戦 (A-1)ハンド/アーム:マスタスレーブシステムを一例として,人間の手に対する高速3次元形状計測によって高精度かつ遅延のない多指ハンドの遠隔動作を実現したことから,対象のダイナミック把握と高速ロボット制御の技術を融合する段階に到達した.また,ハンドには高速触覚センサも搭載していることから,マルチモーダルなセンサフィードバック手法の確立とアプリケーション応用に向けて進む段階に到達した.(A-2)下肢:人間のようにアクロバティックな脚運動を実現するために,ハードウェアの観点から最適な機構を検討して改良を施した.新たにトレッドミルも開発したことから,長距離の助走が必要な空中転回や外部センサの配置によるフィードバックシステムの構築が可能となった.以上から,高速ビジョンネットワークによる二足ロボット制御を構築する段階に到達した. (B)高速に変動する実環境・対象のダイナミック把握 (B-1)高速3次元形状計測:高速なロボット制御のための高速3次元計測を中心とした画像センシングの確立に向けて,センシング手法や処理基盤に関する技術の確立が完了した.現状は,さらに高速ロボットのマニピュレーションタスクの可能性を広げるために,新しい認識対象の3次元計測にチャレンジする段階になりつつあると考えられる.(B-2)高速視線/焦点制御:高速視線制御デバイスとして十分な解像度を達成し,高速ロボット制御応用としても,高速なトラッキング性能をもって有用性を既に十分実証できた.焦点制御装置の開発により視線奥行き方向の制御ができ,レンズの性能評価をすることで,要求性能を達成する焦点制御デバイスとして有用性を実証できた.
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策について,最終年度では融合システムの開発および最終評価と個別デバイスの継続的改良をおこない,サブテーマごとに以下の方針で進める. (A) 高速知能ロボットの速度限界への挑戦 (A-1)ハンド/アーム:サブミリオーダの高分解能なビジョンシステムを構築することで,高速高精度ハンドを用いた位置決め作業の実証や応用アプリケーションを検討する.ボールキャッチでは,衝撃に起因するバックドライブモーションをロボットの塑性変形と捉えた力制御を実装し,受動的な緩衝動作を実現する.高速多指ハンドによる組み立て作業の一環として,高速ビジョンによってキャリブレーションの負担を軽減した環境変動にロバストなネジ回しタスクを実現する.(A-2)下肢:ロボットに搭載する小型高速ビジョンに合わせて,重心バランスや視野範囲の観点からメカニズムの改造を継続的に実施する.二足ロボット本体に搭載した高速ビジョンを用いて,自己姿勢認識と姿勢安定化を実現する手法を提案する.環境設置ビジョンとロボット搭載ビジョンのネットワークを用いた双方向認識による制御性能の向上を目指す. (B) 高速に変動する実環境・対象のダイナミック把握 (B-1)高速3次元形状計測:今後は,高速3次元計測によって認識可能な対象範囲の拡大を推し進めるとともに,高速ロボットに寄与する高速3次元計測モジュールの設計と開発をさらに進める.具体的には,高精度な外界設置型や小型なロボット搭載型の2つの構成を並行して検討するとともに,具体的なタスクにおいて求められるビジュアルフィードバックを設計する.(B-2)高速視線/焦点制御:高速視線制御側のリアルタイムOS化など,高速ロボット制御を見越した更なる技術的成熟を目指す.焦点制御デバイスの改良と応答速度の高速化を目指して,ロボット制御用のアクティブビジョンと融合して,カメラの光学部分の改良を目指す.
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