研究課題
基盤研究(S)
H24年度において以下の研究成果が得られた。1)AMPARの入力および標的選択的な海馬シナプス発現の定量的評価:錐体細胞および抑制性介在ニューロン上の非対称性シナプスにおいて、4種のAMPARサブユニットの発現量を定量的に解析した。その結果、錐体細胞にはGluA1-3の3種のサブユニットが発現したのに対し、抑制性介在ニューロンは高いGluA4を発現した。しかし、介在ニューロンの種類により、発現するサブユニットの組み合わせや量が変化した。2)GluD1によるAMPARの入力選択性および標的選択性の制御機構:小脳プルキンエ細胞シナプスのGluD2に相当する分子は、大脳領域ではGluD1である。そこで、GluD1の特異抗体を作成し、海馬CA1における発現分布を明らかにした。CA1領域への苔状線維の投射領域である網状分子層において豊富なGluD1の発現が観察され、貫通線維シナプス膜およびシナプス外膜に分布していた。3)小脳平行線維シナプスにおけるVGluTスイッチングによる活動依存的なLTD誘発制御:小脳平行線維シナプスにおけるVGluT2→VGluT1スイッチングが遅延するモデルマウスを作成した。4)黒質線状体ドーパミン投射系の係留接着とボリューム伝達による状況依存的伝達制御:ドーパミン作動性軸索による接着装置の分布を、線条体の各種ニューロンマーカーとドーパミン軸索マーカーとの二重に免疫電顕解析を行い、黒質線状体ドーパミン投射系の標的ニューロンを調べた。その結果、ドーパミン軸索との接着装置はドーパミン受容体を発現する中型有棘細胞に豊富に形成されていた。しかし、その接着装置にドーパミン受容体D1,D2の集積傾向は認められず、この接着がシナプス伝達のための装置とは考えにくいことがわかった。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画であるA.海馬におけるAMPAR発現の入力選択性・標的選択性とその制御機構、B.小脳平行線維シナプスにおけるVGluTスイッチングによる活動依存的なLTD誘発制御、C.黒質線状体ドーパミン投射系の係留接着とボリューム伝達による状況依存的伝達制御において、3つの項目とも順調に研究が進展した。
2年度目になるH25年度は、H24年度の上記の研究成果を更に進展させる。A.海馬におけるAMPAR発現の入力選択性・標的選択性とその制御機構については、入力選択的なAMPA受容体の発現調節の実体を明らかにし、その制御機構をTARPの発現分子種と発現量との関係に迫る予定である。B.小脳平行線維シナプスにおけるVGluTスイッチングによる活動依存的なLTD誘発制御については、スイッチング遅延マウスを用いて小脳LTDの機能解析をおこなう。C.黒質線状体ドーパミン投射系の係留接着とボリューム伝達による状況依存的伝達制御については、接着装置の分子構成と接着機構を解明する。さらに、H25からは、D. VGluT3による扁桃体陥入型シナプス伝達の活動依存的制御と恐怖記憶における役割についても研究を開始する。
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すべて 雑誌論文 (31件) (うち査読あり 31件) 学会発表 (13件)
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