研究課題
本年度は、まずメタ記憶課題遂行中のサル大脳ネットワークの機能抑制擾乱時ダイナミクスの解析に大きな成果を挙げた(Miyamoto et al., Science 2017)。再認の成功・不成功に関する自己の確信度を判断する課題(メタ記憶課題)をサルに訓練した。ヒトと同じ精神物理学的指標であるmeta-d’ やФを用いてサルの行動を評価し、サルが実際にメタ記憶課題を正しく遂行していることを示した。その上で、fMRI計測によって2つの「メタ記憶」関連領域(前頭葉9野,6野)を同定した。更に、その神経活動と行動の間の直接的な因果関係を調べるための介入実験として、ムシモール(GABAA 受容体アゴニスト)を用い、fMRI実験によって同定されたそれぞれの領域に対して別々に薬理学的介入を行うと、それぞれの介入による行動指標への影響に乖離が見られることを発見した。即ち、9野に対する介入は遠隔記憶のメタ判断を特異的に阻害し、6野に対する介入は近時記憶のメタ判断を特異的に阻害することが明らかになった。一方、神経回路特異的な情報処理メカニズムとして、記憶の想起時にサル側頭葉36野の大脳皮質は層構造ごとに異なる情報処理機能を担っていることを明らかにした(Koyano et al., Neuron 2016)。ここでは、高磁場MRIと組織切片法を組み合わせた新しい手法を開発して、記憶想起課題を遂行中の神経細胞の位置を、層構造が区別できる精度で同定して詳細にマッピングした。その結果、第2層~4層の神経細胞が手がかり刺激情報を保持し、第5層・6層の神経細胞が想起対象への情報変換を処理しており、想起対象への変換は第5層で6層よりも早く始まっていることを発見した。これらの結果は、サル大脳ネットワークの大域構造および局所情報処理メカニズムを解明する本研究に大きく貢献する成果であると評価している。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Science
巻: 355 ページ: 188-193
10.1126/science.aal0162
Neuron
巻: 92 ページ: 518-529
10.1016/j.neuron.2016.09.024
http://www.physiol.m.u-tokyo.ac.jp/