研究課題
サンゴ骨格、有孔虫殻、二枚貝殻などの生物起源炭酸塩、ならびに鍾乳石試料を対象に、NanoSIMSを用いた高解像度分析を行った。微量元素濃度や同位体比から温度や日射量など過去の海洋環境の情報を高時間分解能で引き出すために、飼育試料を用いて環境プロキシとして最良の元素比や同位体比を検討し、その技術を天然試料に応用した。同位体ラベルに使用した元素には、海水中から生物が取り込む主要な元素を用いることで、生物にストレスを与えることなくマーキングできることを確認した。サンゴや有孔虫、クラゲを同位体試薬でマーキングしながら飼育し、その骨格や殻、平衡石を高解像度で分析した結果を考察した。これまでに同位体ラベルした部分は明瞭に識別できることを確認しており、ラベルした部分の日照や水温などの環境条件から、その環境情報と元素組成や同位体組成を比較した。環境プロキシとなる元素や同位体組成を検討するとともに、特定の元素が生体中に取り込まれるメカニズムについて考察した。これまでに注目してきた水温や日射量、塩分などの環境情報だけでなく、生物起源炭酸塩あるいは鍾乳石のような天然に形成される炭酸塩に他の情報が記録される可能性について検討した。例えば海底の熱水活動の活動履歴が、その周辺に棲む貝殻に残されていないかを確かめるために分析した。分析した貝殻はトカラ列島の海底熱水活動域に生息するシンカイヒバリガイで光学顕微鏡や電子顕微鏡で観察した後、LA-ICP-MSとNanoSIMSにより高解像度で元素濃度を分析した。その結果、熱水に含まれる特徴的な元素にスパイク状の時系列変化が見られ、熱水活動の活発な時期を記録している可能性が示された。また淡水二枚貝の高解像度分析により新たな微量元素変動メカニズムを明らかにした。これらの成果は論文や学会で発表した。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 6件、 査読あり 10件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 13件)
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